2乗して-1になる数?(解のない2次方程式)

解のない2次方程式

 今回は数学史上でも革新的な飛躍をもたらした方程式
\[x^2+1=0\]を扱います。 1 を右辺に移項すると
\[x^2=-1\]となります。この方程式の解を知っている人は「簡単でしょ! 何が革新的なの!?」と思うかもしれませんけど、本当に昔の偉大な数学者たちを悩ませてきた大問題なのです。 16 世紀頃までは、悩むことすらなく「解なし!」と断言する数学者もたくさんいたのです。2次方程式を扱っている段階では、そういう態度でなんとか誤魔化せたのですが、3次方程式の一般解を得るためには、どうしてもこの方程式の解を求める必要がありました。上の方程式は

2乗して-1になる数はいくつか?

を問うています。確かに実数だけの世界にとどまっている限り、そんな数は存在しないのですから、「解なし」とするのもある意味正解なのです。

 ですから発想の転換が必要となります。この方程式の解を求めるのではなく、解を与えるという考え方をするのです。つまり「数」そのものを拡張してルールを変えるのです。以前にも似たようなことをやりましたね。
\[x^2=2\]という方程式は、整数や分数などの「有理数」では表せない解だったので、「数」を「無理数」にまで拡張して平方根という記号を作り出して
\[x=\sqrt{2}\]という形で解を表しました。しかし、この拡張は自然な流れで行えるものでした。有理数も無理数も同じ数直線上に存在し、√2 は 1 と 2 の間のどこかにある数であることは確実だからです。少し難しい言い方をすると

数直線は連続である(どこにも穴が空いていない)

というルールを定めている限り、必然的に現れてくる数だったのです。また、従来の四則演算のルールを変える必要も全くありませんでした。

 でも今回の改革はずっと大胆なものです。これまでの掛け算は
\[0 \times 0=0, \quad 1 \times 1=1, \quad (-1) \times (-1)=1\]というルールが定められていました。

どのような実数も2乗すると 0 以上の数になる

という規則があったのです。この規則を破るには

「実数」とは異なる「別の種類の数」

を改めてつくる必要があります。それが
\[x^2=-1\]を満たす数であり、虚数と名づけられました。新しく制定した数なのに「虚数(imaginary number)」というのは何だかおかしな名前ですし、現代の多くの数学者たちも、この名づけ方は大失敗だったと思っているのですが、慣習的に定着してしまったので仕方ありません。特に初学者に対して「嘘の数なの?」というような誤解を与えるのが難点なのです。嘘を嫌う正直者が数学を敬遠するようになるかもしれません(これは冗談です)。
 

虚数単位 i

 呼び名については脇に置いておいて本題に戻ります。虚数の最小単位(実数の 1 に相当する数)は慣習的に i というアルファベットで表すことになっています。つまり
\[i^2=-1\]です。ただ、新しい数を制定するといっても、2乗以外の計算規則はそのまま維持するようにします。つまり実数に関する計算規則
\[1+1=2,\quad 1-1=0\]に対応して
\[i+i=2i,\quad i-i=0\]と定めておきます。虚数同士の割り算については i2 = -1 の定義から自然に導くことができます。
\[\frac{i}{i}\]の分母と分子に i をかけると
\[\frac{i \times i}{i \times i}=\frac{-1}{-1}=1\]となります。以上、虚数の四則演算をまとめると

\[\begin{align*}&i+i=2i\\[6pt]
&i-i=0\\[6pt]&i \cdot i=-1\\[6pt]
&\frac{i}{i}=1\\[6pt]\end{align*}\]

となります。
 

-1 の平方根

 虚数を導入することで2次方程式
\[x^2=-1\]のみたす解の1つを x = i と書くことができるようになりました。この方程式のもう1つの解は x = -i ですね。この2つをまとめて
\[x=\pm i\]と書きます。また x は -1 の平方根という意味で
\[x=\pm i=\pm \sqrt{-1}\]と表すこともできます。
 

-2 の平方根

 それでは
\[x^2=-2\]の解はどう表せるでしょうか? x は -2 の平方根なので
\[x=\pm \sqrt{-2}\]と書くことができます。-1 = i2 とおくと
\[x=\pm \sqrt{2i^2}=\pm \sqrt{2}i\]というように i を平方根の外に出すことができます。逆算してみると
\[(\pm \sqrt{2}i)^2=2 \cdot i^2 = -2\]となって確かに方程式を満たす数であることがわかります。
 

-a の平方根

 より一般的にまとめておくと

\[x^2=-a \quad (a \gt 0)\] の解は
\[x=\pm \sqrt{-a}=\pm \sqrt{a}i\]

と表すことができます。

練習問題① 次の方程式を解いてください

\((1)\:x^2=-5 \qquad (2)\:x^2=-9 \qquad (3)\:x^2=-a^2\)

練習問題①の解答

\((1)\:x=\pm \sqrt{5}i \qquad (2)\:x=\pm \sqrt{9}i=\pm 3i \qquad (3)\:x=\pm \sqrt{a^2}i=\pm ai\)

練習問題②

 2次式 \(x^2+8\) を因数分解してください。

練習問題②の解答

 \(x^2+8=0\) とおいた方程式の解は
\[x=\pm \sqrt{8}i=\pm 2\sqrt{2}i\]なので、
\[x^2-8=(x+2\sqrt{2}i)(x-2\sqrt{2}i)\]と因数分解できます。

練習問題③

 4次方程式 \(x^4=1\) の解を求めてください。

練習問題③の解答

 4次方程式なので解は4つあります。左辺を移項して
\[x^4-1=0\]とおくと右辺が因数分解できて
\[\begin{align*}(x^2+1)(x^2-1)=0\\[6pt]
(x^2+1)(x+1)(x-1)=0\end{align*}\]となります。よって
\[x^2+1=0,\quad (x+1)(x-1)=0\]の2つの方程式を解いて、
\[x=\pm1,\;\pm i\]の4つが求める解となります。 ≫ 学び直し講座

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