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ネイピア数eが無理数であることの証明

ネイピア数の定義と計算方法

ネイピア数(Napier’s number) は次のように定義されます。
 \[\lim_{n\rightarrow \infty} \left( 1+\frac{1}{n}\right)^n=2.71828 … \tag{1}\]
$a_n=(1+1/n)$ に $n$ の具体的な値を入れると
 
\[\begin{align*}a_{10}=2.59374\\[6pt]a_{100}=2.70481\\[6pt]a_{1000}=2.71692\\[6pt]a_{10000}=2.71815\\[6pt]a_{100000}=2.71827\\[6pt]a_{800000}=2.71828\\[6pt]\end{align*}\]
のように、ネイピア数の近似値を得ることができます。Excel では、EXP() 関数を使ってネイピア数を計算できます。EXP(n) はネイピア数の n 乗を返す関数なので、

=EXP(1)

とすれば、ネイピア数の 15 桁の近似値 2.71828182845905 が得られます。

級数a_n=(1+1/n)^nが収束することの証明

上に有界な単調増加数列は収束するという定理を用いて級数 $a_n=(1+1/n)^n$ が収束することを証明します。まずはこの数列が単調増加数列であることを示します。 2 項展開公式
 \[(a+b)^n=\sum_{k=0}^{n}\binom{n}{k}\]
によって $a_n=(1+1/n)^n$ は
 \[\begin{align*}a_n=&\binom{n}{0}\frac{1}{n^0}+\binom{n}{1}\frac{1}{n^1}+\binom{n}{2}\frac{1}{n^2}+\binom{n}{3}\frac{1}{n^3}\\[6pt]&+\: \cdots \:+\binom{n}{k}\frac{1}{n^k}+\:\cdots\:+\binom{n}{n}\frac{1}{n^n}\end{align*}\]
と展開できます。ここで $\displaystyle \binom{n}{k}$ は 2 項係数であり
 \[\binom{n}{k}=\frac{n(n-1)(n-2)\:\cdots\:(n-k+1)}{k!}\]
と表されます。 2 項係数の具体的な表式を入れると
 \[\begin{align*}a_n=&1+n\cdot\frac{1}{n}+\frac{n(n-1)}{2!}\frac{1}{n^2}+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}\frac{1}{n^3}\\[6pt]&+\:\cdots\:+\frac{n(n-1)\:\cdots\:(n-k+1)}{k!}\frac{1}{n^k}+\:\cdots\:+\frac{1}{n^n}\\[6pt]=&1+1+\frac{1}{2!}\left(1-\frac{1}{n}\right)+\frac{1}{3!}\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)\\[6pt]&+\:\cdots\:+\frac{1}{k!}\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)\:\cdots\:\left(1-\frac{k-1}{n}\right)\\[6pt]&+\: \cdots\:+\frac{1}{n!}\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)\: \cdots \:\left(1-\frac{n-1}{n}\right)\end{align*}\]
となります。この式で $n$ を $n+1$ に置き換えると
 \[a_{n+1}=1+1+\frac{1}{2!}\left(1-\frac{1}{n+1}\right)+\frac{1}{3!}\left(1-\frac{1}{n+1}\right)\left(1-\frac{2}{n+1}\right)+\:\cdots\]
となり、第 3 項移項は $a_n$ よりも $a_{n+1}$ のほうが値が大きく、$a_{n+1}$ は $a_n$ よりも項数が 1 つ多いので $a_n \lt a_{n+1}$ が常に成り立っています。よって数列 $\{a_n\}$ は単調増加数列です。次に $\{a_n\}$ が上に有界な数列であることを示します。$a_n$ の 2 項展開式の第 $k$ 項に着目すると
 \[\frac{1}{k!}\left( 1-\frac{1}{n} \right) \left( 1-\frac{2}{n} \right)\: \cdots \:\left( 1-\frac{k-1}{n} \right) \lt \frac{1}{k!} \lt \frac{1}{2^{k-1}}\]
が成り立っています。よって
 \[\begin{align*}a_n &\lt 1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\: \cdots \: +\frac{1}{2^{n-1}}\\[6pt]&=1+\frac{1-1/2^n}{1-1/2}=3-\frac{1}{2^{n-1}} \lt 3\end{align*}\]
となるので、$\{a_n\}$ は上に有界な数列です。上に有界な単調増加数列は必ず収束するので、ネイピア数 $e$ は収束します。

(1) は実数 $x$ によって
 \[e=\lim_{x\rightarrow \infty} \left( 1+\frac{1}{x}\right)^n=2.71828 … \tag{2}\]
と定義することができます。

【(2)=(1)の証明】(2) が (1) と一致することを証明します。
 \[a=\lim_{x\rightarrow \infty} \left( 1+\frac{1}{x}\right)^n\]
とおいて、実数 $x$ を $n \leq x \lt n+1$ とします。逆数をとると
 \[\frac{1}{n+1} \lt \frac{1}{x} \leq \frac{1}{n}\]
となります。各辺に 1 を加えて
 \[1+\frac{1}{n+1} \lt 1+\frac{1}{x} \lt 1+\frac{1}{n}\]
$n \leq x \lt n+1$ より
 \[\left( 1+\frac{1}{n+1}\right)^n \lt \left( 1+\frac{1}{x}\right)^x \lt \left( 1+\frac{1}{n}\right)^{n+1}\]
ここで $n\rightarrow \infty$ とすると
 \[e\leq a\leq e\]
となって、$a$ はネイピア数 $e$ に等しいことがわかります。

微分しても形を変えない指数関数 $e^x$ の底 $e$ をネイピア数であると定義するだけで、$e$ を級数の形で表すこともできます。すなわち $x=0$ におけるテイラー級数の式
 \[f(x)=\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k+R_{n+1}\]
において $f(x)=e^x$ とおくと、
 \[f^{(k)}(x)=e^x,\quad f^{(k)}(0)=1\]
なので、
 \[e^x=\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!}x^k+R_{n+1}\]
となります。ここでラグランジュ型剰余項は
 \[R_{n+1}=\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}x^{n+1}=\frac{e^cx^{n+1}}{(n+1)!},\quad (0 \lt c \lt x)\]
と表され、$n\rightarrow \infty$ のとき剰余項は 0 に収束します。よってネイピア数を底とする指数関数 $e^x$ は
 \[e^x=\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!}x^k=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\: \cdots\]
と級数展開され、ネイピア数は $x=1$ として
 \[e=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\:\cdots\]
と表されることになります。この級数は収束が早く、第 10 項までとれば $e=2.71828$ という非常に良い近似値が得られます。

ネイピア数が無理数であることの証明

ネイピア数が無理数であることを証明します。ネイピア数 $e$ を級数展開すると
 \[e=\sum_{k=0}^{\infty }\frac{1}{k!}=1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\cdots \cdots \tag{1}\]
ここで $e$ が有理数である、すなわち自然数 $m,\;n$ を使って
 \[e=\frac{m}{n}\tag{2}\]
と表せると仮定して両辺に $n!$ をかけると、
 \[n!\:e=(n-1)!\:m\]
となり、これは明らかに整数です。一方で (1) に $n!$ をかけると
 \[\begin{align*}n!\: e=&n!\left[1+1+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\cdots\cdots \right]\\&+n!\left[\frac{1}{(n+1)!}+\frac{1}{(n+2)!}+\frac{1}{(n+3)!}+\cdots \cdots\right ]\end{align*}\]
のように表されますが、第 1 項は
 \[n!+n!+\frac{n!}{2!}+\frac{n!}{3!}+\cdots \cdots +1\]
となって明らかに整数です。第 2 項を評価すると
 \[\begin{align*}&\frac{n!}{(n+1)!}+\frac{n!}{(n+2)!}+\frac{n!}{(n+3)!}+\cdots \cdots \\&=\frac{1}{n+1}+\frac{1}{(n+1)(n+2)}+\frac{1}{(n+1)(n+2)(n+3)}+\cdots \cdots \\&\leq \frac{1}{n+1}+\frac{1}{(n+1)^2}+\frac{1}{(n+1)^3}+\cdots\cdots=\frac{\cfrac{1}{n+1}}{1-\cfrac{1}{n+1}}=\frac{1}{n}<1\end{align*}\] となり、これは非整数です。つまり (1) は非整数であり、(2) は整数となって矛盾します。よって $e$ は無理数であることが証明されました。

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  1. Semi574 より:

    大変役に立ちました.ありがとうございました.
    a_n=の式の2行目k!の分子で(n-k+1)のところが(n-r+1)と文字が間違っています.
    いつもrを使うと間違えますよね.

    • Blog Cat より:

       ありがとうございます。記事は修正しておきました (^^)/。
       膨大な量の記事を一人ではチェックできないので、ミスを御指摘いただけると本当に助かります。
       今後もよろしくお願いします。