熱力学と統計力学 おすすめ教科書・入門書・演習書・洋書

 

熱力学と統計力学

 人類にとって火は常に身近にあり、また紀元前から製鉄などで数千度に達する高温技術を用いていたにも関わらず、熱の伝わる仕組みというものを体系的な学問として確立させたのは 19 世紀末になってからのことです。これは「熱」を定量的に扱うためには、エネルギーの概念を定式化する古典力学が必要不可欠だったからです(もちろんこれは現代から振り返ってわかることです)。ニュートンが古典力学を完成させたのは 17 世紀の終わりですから、そこから約 2 世紀近く様々な実験を繰り返して「とりあえず熱の正体はエネルギーであるらしい」ということを突き止めました。こうして熱力学第1法則(内部エネルギーの増加は熱量と仕事量を加えたものである)、熱力学第2法則(熱が高温から低温へ移る現象は不可逆である)などを基本法則として様々な現象を記述する 熱力学 が誕生しました。

 しかしこの「熱力学」という分野、少ない基本法則から数多の現象を導き出すという点でとても美しい理論構造をもちますが、抽象的でわかりにく面もあって、多くの学生を戸惑わせているのも事実です。その最大の要因は「熱量がエネルギーの単位をもつことはわかったとして、それがいったいどこから発生しているものなのか」が不明なままマクロの視点で築き上げられた学問であることです。これは当時まだ「物質が原子や分子で構成されたものである」ということが実証されていなかったので、やむをえないことではありました。しかしそれからしばらくして「熱とは物質を構成する個々の原子や分子のもつ運動エネルギーの総和である」という確証のもと、「気体分子運動論」を基礎に明快でわかりやすい論理を積み上げて熱現象を解き明かす 統計力学 という手法が確立します。したがって熱力学も統計力学も(古典的な近似がきく範囲に限っては)その手法が異なるだけで、同じ現象を扱う学問だといえます。そして統計力学のほうが古典力学をわかりやすい形で応用しているので、熱力学よりもイメージがつかみやすくなっています。熱力学ではなんだかさっぱりわからないエントロピーという概念も、統計力学の視点で学ぶと「なるほど。そういうことね」とすんなりとイメージが掴めたりします。

 このように熱力学と統計力学は互いに深く関連しあっているので、熱力学を読んだあとは(全部理解しなくてもよいので)、なるべく時間をおかずに統計力学の本を読むことをおすすめします。熱力学で疑問に感じていた部分を統計力学の視点で見直すことによって理解がより一層深まるはずです。
 

熱力学と統計力学 おすすめ教科書・入門書・演習書・洋書

熱・統計力学(物理入門コース7)

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 初級用テキストとしておなじみの『物理入門コース』第7巻です。
 この一冊で熱力学と統計力学の両方が学べる構成になっています。1~3章までの熱力学と、4章以降の統計力学は完全に独立しているので、4章から読み進めても理解できるようになっています。4~6章までは古典的な体系を扱い、7章と8章では量子統計に軽く触れています。定番の教科書として用いられる本ですから、いたってオーソドックスなスタイルで書かれた本です。初学者用ですので記述は丁寧でわかりやすく、とりあえず最初はこの本で全体を通して学んでみて、そのあともう少し「ひねった」テキストを探してみるとよいと思います。
 

熱力学 現代的な視点から(新物理学シリーズ)

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 タイトルにあるように現代的な視点で熱力学を再構成した本です。
 熱力学第2法則を先に議論して、そのあと第1法則を導入しています(一般的なスタイルのクラウジウス流とは逆順です)。このようにして組み直された理論は非常に全体の見通しがよくなっているし、扱う数学もさほど高度ではないので(偏微分は必要です)、初学の段階からこの本で学んでも面白いかもしれません。エントロピーの概念について多くのページを割いて丁寧に解説してくれるので、「エントロピーとは何ぞや?」を探求している人にもおすすめです。
 

熱力学・統計力学 (SPRINGER UNIVERSITY TEXTBOOKS)

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 ハイレベルな熱力学・統計力学を学んでみたい人には本書がおすすめです。熱力学を学ぶ段階から、統計力学の概念を用いるので、熱力学と統計力学を混合したような理論構成になっています。統計力学の定番ともいえる「格子振動」「磁性」「ボーズアインシュタイン凝縮」に加え、「中性子星」「クォーク・グルオンプラズマ」など天体物理学や原子核物理学への応用例まで載っています。研究現場で使われる「生きた統計力学」を学ぶことができます。
 

大学演習 熱学・統計力学

大学演習 熱学・統計力学

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 毎度のことながら、物理の演習書は選択肢が少ないです。
 今回も定番の『大学演習』シリーズを紹介しておきます。あまりに増刷を繰り返したものだから原版が限界にきて、見やすい活字の修訂版が発行されたようです。なので最新版の購入をおすすめします。他の演習書にあって、この本に載っていない問題はないといっていいほど、たくさんの問題が載っています。他の演習書では「どうせ難しくて誰も解けないから載せないでおこう」と捨てているような難問も載っています。別に全部解く必要はないと思いますけど、辞典代わりに使えるし、自分で適当な難易度の問題を選んで定期試験、院試対策に使うこともできます。
 

熱・統計力学の洋書(英語版)

Thermodynamics and an Introduction to Thermostatistics

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Thermodynamics of Information Processing in Small Systems (Springer Theses)

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