【PS12】展開式の定数項
$\displaystyle\left(1+x+\frac{1}{x^2}\right)^8$ の 展開式 における 定数項 を求めてください。
【ヒント】二項定理 を使って展開し、$x$ の指数が $0$ となるような項の和をとります。多項定理を使って解くこともできます。下の解答では両方の解き方を載せます。
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【解答】二項定理
\[(a+b)^n=\sum_{r=0}^n{}_n\mathrm{C}_r\:a^{n-r}\:b^{\:r}\]
において $a=1$ とおくと
\[(1+b)^n=\sum_{r=0}^n{}_n\mathrm{C}_r\:b^{\:r}\]
となるので、
\[\left(1+x+\frac{1}{x^2}\right)^8=\sum_{p=0}^8{}_8\mathrm{C}_p\,\left(x+\frac{1}{x^2}\right)^p\]
と書けます。さらに $\displaystyle\left(x+\frac{1}{x^2}\right)^p$ を 2 項展開すると
\[\begin{align*}\left(1+x+\frac{1}{x^2}\right)^8=&\,\sum_{p=0}^8{}_8\mathrm{C}_p\,\sum_{q=0}^p{}_p\mathrm{C}_q\,x^{p-q}x^{-2q}\\[6pt]=&\,\sum_{p=0}^8{}_8\mathrm{C}_p\,\sum_{q=0}^p{}_p\mathrm{C}_q\,x^{p-3q}\end{align*}\]
定数項は $p-3q=0$ となる項なので、$0\leq p\leq q\leq 8$ より
\[(p,\:q)=(0,\:0),\;(3,\:1),\;(6,\:2)\]
が条件を満たす組合せです。定数をすべて足し合わせると
\[1+{}_8\mathrm{C}_3\cdot{}_3\mathrm{C}_1+{}_8\mathrm{C}_6\cdot{}_6\mathrm{C}_2=1+168+420=589\]
となります。
【別解】本問は多項定理を使って解くこともできます。多項定理とは、
\[(a+b+c+\cdots)^n\]
の展開式の各項が
\[\frac{n!}{p!\,q!\,r!\,\cdots\,}a^p\,b^q\,c^r\,\cdots\qquad (p+q+r+\cdots=n)\]
の形になるというもので、本問の $\displaystyle\left(1+x+\frac{1}{x^2}\right)^8$ に適用すると
\[\frac{8!}{p!\,q!\,r!}1^p\,x^q\,\left(\frac{1}{x^2}\right)^r=\frac{8!}{p!\,q!\,r!}x^{q-2r}\qquad (p+q+r=8)\]
となります。定数項となるのは $q-2r=0$ のときです。$p+q+r=8$ という条件と合わせて、
\[q=2r,\quad p+3r=8\]
を満たすような整数の組合せを見つけます。$r$ を $1,\;2,\;\cdots$ と動かして
\[\begin{align*}r=0,\quad p=8,\quad q=0\\[6pt]r=1,\quad p=5,\quad q=2\\[6pt]r=2,\quad p=2,\quad q=4\end{align*}\]
定数項を足し合わせると
\[\frac{8!}{8!\,0!\,0!}+\frac{8!}{5!\,2!\,1!}+\frac{8!}{2!\,4!\,2!}=589\]
となります。
【PS13】二項係数の平方和
次の等式を証明してください。
\[{}_n\mathrm{C}_0^{\,2}+{}_n\mathrm{C}_1^{\,2}+{}_n\mathrm{C}_2^{\,2}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_r^{\,2}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_n^{\,2}=\frac{(2n)!}{n!\,n!}\](名古屋市大)
【ヒント】二項係数を平方して足し加えると、とてもきれいな形で表されます。一見すると簡単そうに見えますが、取っ掛かりが掴めないと意外と苦戦するかもしれません。二項定理を使うのは当然として、どのように二項係数の平方を作り出すかがポイントになります。
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【解答】二項係数 ${}_n\mathrm{C}_r$ は $(1+x)^2$ の展開式における $x$ の係数として現れます:
\[(1+x)^n=\sum_{r=0}^n{}_n\mathrm{C}_r\:x^{\:r}\]
そこで、2 項係数の平方をつくるために
\[(1+x)^n\,(1+x)^n\]
という式の展開を考えると、$x^n$ の係数は
\[{}_n\mathrm{C}_r\,x^{r}\,{}_n\mathrm{C}_{n-r}\,x^{n-r}\]
として現れてくるはずです。$r$ を $0$ から $n$ まで動かして係数をすべて足し合わせると
\[{}_n\mathrm{C}_0\,\cdot\,{}_n\mathrm{C}_n+{}_n\mathrm{C}_1\,\cdot\,{}_n\mathrm{C}_{n-1}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_r\,\cdot\,{}_n\mathrm{C}_{n-r}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_n\,\cdot\,{}_n\mathrm{C}_0\]
となります。${}_n\mathrm{C}_{n-r}={}_n\mathrm{C}_r$ の公式を用いると
\[{}_n\mathrm{C}_0^{\,2}+{}_n\mathrm{C}_1^{\,2}+{}_n\mathrm{C}_2^{\,2}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_r^{\,2}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_n^{\,2}\]
となって、問題で与えられた式の左辺を得られます。次に $(1+x)^{2n}$ を 2 項展開すると、
\[(1+x)^{2n}=\sum_{r=0}^n{}_{2n}\mathrm{C}_r\:x^{\:r}\]
なので、$x^n$ の係数は
\[{}_{2n}\mathrm{C}_n=\frac{(2n)!}{n!\,n!}\]
となります。よって、
\[{}_n\mathrm{C}_0^{\,2}+{}_n\mathrm{C}_1^{\,2}+{}_n\mathrm{C}_2^{\,2}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_r^{\,2}+\cdots+{}_n\mathrm{C}_n^{\,2}=\frac{(2n)!}{n!\,n!}\]
が示されました。■
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