【NT01】abc=a+b+cを満たす整数
$0$ 以外の整数 $a,\:b,\:c$ について $abc=a+b+c$ を満たす整数の組を全て求めてください。
【ヒント】『数学実験室』のほうで似たような問題を取り上げましたが、そのときは「正の整数」という条件がついていました。しかし今回はその条件も取り払ったので、かなり難易度が上がっています。符号に注意しながらの丁寧な分析が必要になります。
【解答】対称式であることに着目して $0$ を含めた条件を設定して場合分けしていきます。
\[abc=a+b+c\tag{1}\]
[1] $0\lt a\leq b\leq c$、すなわち全て正の整数である場合を考えます。このとき、
\[abc\leq 3c\]
が成り立つので、
\[ab\leq 3\]
条件を満たすのは $(a,\:b) = (1,\:2), (1,\:3)$ だけです。
$(a,\:b)=(1,\:3)$ のとき式 (1) より $c=2$ となりますが、これは設定した条件に反します。$(a,\:b)=(1,\:2)$ のときは $c=3$ となって、
\[(a,\ b,\ c)=(1,\ 2,\ 3)\]
条件を取り外して $(a,\ b,\ c)$ について並び替えをすると
\[(a,\ b,\ c)=(1,\ 2,\ 3),\ (1,\ 3,\ 2),\ (2,\ 1,\ 3),\ (2,\ 3,\ 1),\ (3,\ 1,\ 2),\ (3,\ 2,\ 1)\]
となります。
[2] $a\lt 0\leq b\leq c$ のとき、$a=-|a|$ とおくと、式 (1) は
\[-|a|bc=-|a|+b+c\]
整理すると
\[(1-bc)|a|=b+c\]
$b=c=1$ のときには上式を満たす $a$ は存在しません。
よって、$bc\neq 1$ として
\[|a|=\frac{b+c}{1-bc}\]
となりますが、$1\lt bc$ なので右辺は必ず負になります。絶対値が負になることはあり得ませんから、これは不合理です。よって条件[2]を満たす整数は存在しません。
[3] $a\lt b\lt 0\leq c$ のとき、$a=-|a|,\ b=-|b|$ とおくと [1] は
\[(1-|a||b|)c=|a|+|b|\]
やはり $|a|=|b|=1$ を満たす $c$ は存在しないので
\[c=\frac{|a|+|b|}{1-|a||b|}\]
これもまた $1 \lt |a||b|$ より右辺が負となって不合理。
条件[3]を満たす整数も存在しません。
[4] $a\lt b\lt c\lt 0$ のとき、すなわち全ての整数が負である場合です。
$a=-|a|,\:b=-|b|,\:c=-|c|$ とおいて (1) から
\[|a||b||c|=|a|+|b|+|c|\]
という式が得られますが、これは条件[1]のときと同じようにして
\[(|a|,\:|b|,\:|c|)=(1,\:2,\:3)\]
が得られます。すなわち
\[(a,\:b,\:c)=(-1,\:-2,\:-3)\]
となります。条件を外して $a,\ b,\ c$ について並び替えると
\[\begin{align*}(a,\ b,\ c)=&(-1,\ -2,\ -3),\ (-1,\ -3,\ -2),\ (-2,\ -1,\ -3),\\[6pt]&(-2,\ -3,\ -1),\ (-3,\ -1,\ -2),\ (-3,\ -2,\ -1)\end{align*}\]
以上[1]から[4]より、条件式 (1) を満たす $0$ 以外の整数は
\[\begin{align*}(a,\ b,\ c)=&(1,\ 2,\ 3),\ (1,\ 3,\ 2),\ (2,\ 1,\ 3),\\[6pt]&(2,\ 3,\ 1), (3,\ 1,\ 2),\ (3,\ 2,\ 1),\\[6pt]&(-1,\ -2,\ -3),\ (-1,\ -3,\ -2),\ (-2,\ -1,\ -3),\\[6pt]&(-2,\ -3,\ -1),\ (-3,\ -1,\ -2),\ (-3,\ -2,\ -1)\end{align*}\]
となります。
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