Excel で描く数学関数グラフコレクション

 Excel で描いたグラフを見ながら、数学関数の性質を探ってみようというコーナーです。sinx や logx などの初等関数に始まって、デルタ関数などの大学レベルの数学まで幅広く扱います。

 疾走線(シッソイド)
 正規分布関数からデルタ関数へ
 x の x 乗根
 三角級数
 余弦定理の意味
 アステロイドの変形
 2 つの円軌道の重ね合わせ
 

Excel 数学グラフコレクション

 高校で数学Ⅲなどを学ばれた皆さんは「数学のグラフなら、微分して増減表を作ってグラフを描けばいいでしょ。どうしてわざわざコンピューターを持ち出すの?」と疑問に思われるかもしれません。

 しかし実のところ、無数にある関数の中で手計算のみで扱える関数というのは、ほんの一握りしかありません。仮に可能だとしても、x に対応する f(x) を1つ1つ細かく計算するという、途方もない労力を要する場合がほとんどです。大学初年度に扱うガンマ関数(積分形式で表される関数)でさえ、コンピューターの力を借りずにその概形を描くことは至難の業です。cosx や sinx のような基本的な関数であっても、y = cos(1/sinx) というように、ちょっと複雑に組み合わされてしまうと、途端に扱いが難しくなります。大学入試などで出題される関数というのは、数ある関数の中から紙と鉛筆だけで扱えるような稀少な関数をわざわざ選んでいるのです。

 しかしコンピューターの力を借りると、僅かな労力と時間( Excel なら 10 分程度が目安です)で、およそほとんどの関数の姿を顕にしてくれます。たとえば、

f(x) = cosx sinx / Γ(x2) + logx

のような、見ただけではとても姿を想像できない関数であっても、f(x) = x2 のグラフを描くのとほとんど変わらない速さで結果を出力してくれます。

 数学(特に解析学)にコンピューターを導入すると、これまで居た狭い世界から一気に広大な海へと乗り出すような解放感を得られます。「どんな関数も自在に解析することができる」というのは、それだけで非常に知的好奇心をくすぐられるものです。そこには紙と鉛筆で解く数学とはまた別種の面白さがあります。

 コンピューター数学というと、大学などでは C++ など本格的なプログラミング言語や Mathematica など数学専門ソフトで扱うのが普通ですが、そのような技術を得るには、またそのための特別な勉強が必要ですし、実のところ、Excel や VBA に出来て C 言語で扱えないという関数はあまり思いつきません。高度なプログラミング環境が必要なのは、むしろ物理学における仮想実験などの動的シミュレーションの分野です。ただ 3 次元関数に関しては Excel は不得手で、 Mathematica など専門ソフトを利用するしかないのですが、 2 次元に限ってならば Excel で十分です。

 また Excel は普通の会社で使われているソフトですから、数学を通してその技術を身につけておくことは決して無駄にはならないはずです。

 これは私自身が Excel による解析を続けて経験したことですが、膨大な種類のグラフを見続けることで、関数に対してある種の独特の「嗅覚」が身につきます。まだ描いたことのない関数を一瞬見ただけで「たぶん、こういう形だね。x → ∞ の極限ではこうなるよ」というようなことが脳内に浮かび上がってきます。そうした嗅覚を会得してから改めて数学の本を読んでみると、以前とは全く感覚が異なっていました。フーリエ級数やラプラス変換などの概念が、本当に直に手で触れているような実感を伴っているのです。これは理屈では説明しがたい感覚なので、ぜひとも皆さんにもこのコーナーの記事をたくさん読んでいただき、この「嗅覚」を身につけて受験勉強や大学の講義の理解などに役立ててもらいたいと願っています。

 このサイトを訪れてくれた人は少なからず数学に興味をお持ちだと思います。理工学部の学生さんであったり、普段から数学の問題に挑戦するのが趣味という人だったりするかもしれません。この機会にぜひコンピューター数学の面白さにも気づいてもらえたら嬉しいです。