漸化式の特性方程式の使い方

【SQ29】二項間漸化式の基本問題

 $a_1=1,\ a_n=5a_{n-1}+4\quad (n\geq 2)$ を満たす数列 $\{a_n\}$ を定義します。
 (1) 一般項 $a_n$ を求めてください。
 (2) 初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を求めてください。
 
【ヒント】1つ前の項を $5$ 倍して $4$ を加えるという操作で数列
 
\[1,\ 9,\ 49,\ 249,\ 1249,\ \cdots\]
が作られます。漸化式 $a_n=5a_{n-1}+4$ の定数 $4$ がなければ、公比 $5$ の等比数列となることに着目します。
 

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【解答】$a_n=5a_{n-1}+4$ の両辺に $1$ を加えると
 
\[a_n+1=5a_{n-1}+5=5(a_{n-1}+1)\]
となるので、数列 $\{a_n+1\}$ は初項 $a_1+1=2$, 公比 $5$ の等比数列です。その一般項は
 
\[a_n+1=2\cdot 5^{n-1}\]
となります。よって数列 $\{a_n\}$ の一般項は
 
\[a_n=2\cdot 5^{n-1}-1\]
と表せます。これは $n=1$ のときも成立しています。
 
【補足】本問では両辺に $1$ を加えるだけで漸化式を変形できましたが、一般に $a_{n}=pa_{n-1}+q$ の形の漸化式は 特性方程式 を使って解きます。特性方程式は SQ30 でも扱いますが、敢えて本問で与えられた漸化式
 
\[a_n=5a_{n-1}+4\tag{A1}\]
特性方程式 をつくってみると、
 
\[x=5x+4\tag{A2}\]
となります ($x=-1$)。(A1) から (A2) を引くと、
 
\[a_n-x=5(a_{n-1}-x)\]
となって、上手く定数 $4$ を消すことができます。$x=-1$ なので
 
\[a_n+1=5(a_{n-1}+1)\]
という数列 $a_n+1$ の漸化式を得ることができます。
 
(2) (1) で得た一般項 $a_n=2\cdot 5^{n-1}-1$ について、$a_1$ から $a_n$ までの和をとります。
 
\[\begin{align*}S_n&=\sum_{k=1}^{n}a_k=\sum_{k=1}^{n}(2\cdot 5^{k-1}-1)\\[6pt]&=2\sum_{k=1}^{n}5^{k-1}-\sum_{k=1}^{n}1\\[6pt]&=2\frac{5^n-1}{5-1}-n=\frac{5^n-1}{2}-n\end{align*}\]
【検算】念のために検算して、$S_1=1,\ S_2=10$ となることも確認しておいてください。

【SQ30】漸化式の特性方程式

 漸化式 $a_1=1,\ a_{n+1}=3a_n-7$ によって数列 $\{a_n\}$ を定義します。
 (1) 一般項 $a_n$ を求めてください。
 (2) 初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を求めてください。
 
【ヒント】特性方程式 を使って解きます。

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【解答】与えられた漸化式
 
\[a_{n+1}=3a_n-7\tag{B1}\]
の特性方程式
 
\[x=3x-7\tag{B2}\]
をつくって、(B1) から (B2) を引くと
 
\[a_{n+1}-x=3(a_n-x)\]
となります。(B2) を解くと $\displaystyle x=\frac{7}{2}$ なので、
 
\[a_{n+1}-\frac{7}{2}=3\left(a_n-\frac{7}{2}\right)\]
という、数列 $\displaystyle \left\{a_{n}-\frac{7}{2}\right\}$ についての漸化式が得られます。$\displaystyle\left\{a_{n}-\frac{7}{2}\right\}$ は初項 $\displaystyle a_1-\frac{7}{2}=\frac{5}{2}$, 公比 $3$ の等比数列なので、
 
\[a_n-\frac{7}{2}=-\frac{5\cdot 3^{n-1}}{2}\]
で表されます。よって数列 $\{a_n\}$ の一般項は
 
\[a_n=-\frac{5\cdot 3^{n-1}}{2}+\frac{7}{2}\tag{B3}\]
となります。
 
(2) (B3) の $a_1$ から $a_n$ までの和をとると、
 
\[\begin{align*}S_n&=\sum_{k=1}^{n}a_k=\sum_{k=1}^{n}\left(-\frac{5}{2}\cdot 3^{k-1}+\frac{7}{2}\right)\\[6pt]&=-\frac{5}{2}\sum_{k=1}^{n}3^{k-1}+\frac{7}{2}\sum_{k=1}^{n}1\\[6pt]&=-\frac{5}{2}\frac{3^n-1}{3-1}+\frac{7}{2}n=-\frac{5(3^n-1)}{4}+\frac{7}{2}n\end{align*}\]
となります。

【SQ31】減衰数列

 数列 $\{a_n\}$ において、漸化式
 
\[a_1=1,\quad a_{n+1}=\frac{a_n}{a_n+5}\]
が成り立つとき、$a_n$ を $n$ の式で表してください。
 
【ヒント】これもよくあるタイプの問題です。両辺の逆数をとってみてください。あとの検算のために漸化式を使って $a_n$ を書き並べておきましょう。
 
\[a_1=1,\quad a_2=\frac{1}{6},\quad a_3=\frac{1}{31},\quad a_4=\frac{1}{156},\ \cdots\]
 $n$ の増加にともなって減衰していく数列となっています。
 

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【解答】与えられた漸化式の形から、$a_n$ は常に正の値をとる ($a_n$ は $0$ にならない) ので、両辺の逆数をとることができます。
 
\[\frac{1}{a_{n+1}}=\frac{a_n+5}{a_n}=\frac{5}{a_n}+1\]
 ここで $b_n=\cfrac{1}{a_n}$ とおくと、
 
\[b_1=1,\quad b_{n+1}=5b_n+1\tag{C1}\]
という漸化式が得られます。特性方程式をつくると、
 
\[x=5x+1\tag{C2}\]
となります。(C1) から (C2) を引くと
 
\[b_{n+1}-x=5(b_n-x)\]
 $x=-\cfrac{1}{4}$ なので、
 
\[b_{n+1}+\frac{1}{4}=5\left(b_{n}+\frac{1}{4}\right)\]
 よって、数列 $\left\{b_{n}+\cfrac{1}{4}\right\}$ は初項 $b_1+\cfrac{1}{4}$, 公比 $5$ の等比数列なので、
 
\[b_{n}+\cfrac{1}{4}=5^{n-1}\left(b_{1}+\frac{1}{4}\right)=\frac{5^n}{4}\]
となります。したがって、$b_n$ は
 
\[b_n=\frac{5^n-1}{4}\]
と表されるので、逆数をとって
 
\[a_n=\frac{4}{5^n-1}\]
が得られます。これは $n=1$ のときも満たしています。
 
【検算】得られた $a_n$ に $n=1,\ 2,\ 3,\ 4$ を入れると、
 
\[a_1=1,\quad a_2=\frac{1}{6},\quad a_3=\frac{1}{31},\quad a_4=\frac{1}{156}\]
となって、ヒントで書き並べた $a_n$ の値と一致することがわかります。

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