数学では( )を使って式をまとめるのとは逆に、( )を外して展開しなければならない場面もあります。今回は色々な式の展開について学んでみましょう。
一般的な展開方法
全ての文字が別々という、一番面倒くさい展開から先に練習しておきましょう。そうすれば後の学習が楽に感じられます。たとえば
(a + b)(c + d)
という式を展開することを考えます。まず (c + d) をひとかたまりとみて、分配法則にしたがって順に計算すると ……
(a + b)(c + d) = a (c + d) + b (c + d) = ac + ad + bc + bd
全ての項の積の組合せが出現していますね。単調ですが、気を抜くと計算ミスが生じやすいので、自分なりの計算ルールを確立しておいたほうがいいです。基本的には上のように「まず a についての積を書き出し、次に b についての積を書く」とすれば分かりやすいと思います。いくつか問題を用意したので練習しておいてください。
問題① 次の式を展開してください
(1) (a + b)(c + d + e)
(2) (p + q + r)(p + s + t)
問題①の解答
(1) (a + b)(c + d + e) = ac + ad + ae + bc + bd + be
(2) (p + q + r)(p + s + t) = p2 + ps + pt + pq + qs + qt + pr + rs + rt
(a + b)2 の展開
上で練習した方法で (a + b)2 を計算してみましょう:
(a + b)2 = (a + b)(a + b) = a2 + ab + ab + b2 = a2 + 2ab + b2
この結果は数学で頻繁に使う公式なので覚えてください:
(a + b)2 = a2 + 2ab + b2 [1]
この公式で b を - b で置き換えると
(a - b)2 = a2 - 2ab + b2 [2]
が得られます。特に [1] は平方計算などで実用的な利点のある公式です。たとえば 21 の平方計算を例にすると、
212 = (20 + 1)2 = 202 + 2・20・1 + 12 = 441
と計算します。真中の 2ab があるので、実用上は下 1 桁が小さい計算に適用します。 222 でもさほど難しくありません:
222 = (20 + 2)2 = 202 + 2・20・2 + 22 = 484
暗算できるようになるまでには練習問題を繰り返し解く必要がありますが、このような掛け算については次のシリーズでまとめて扱うので、今は「こういう計算の仕方があるんだ」ぐらいに思っておいてください。まずは展開の練習をしておきましょう。
問題② 次の式を展開してください
(1) (a + b + c)2 (2) (a + b + c + d)2
問題②の解答
(1) (a + b + c)2 = (a + b)2 + 2(a + b)c + c2
= a2 + 2ab + b2 + 2ac + 2bc + c2
= a2 + b2 + c2 + 2ab + 2ac + 2bc
(2) (a + b + c + d)2 = (a + b)2 + 2(a + b)(c + d) + (c + d)2
= a2 + b2 + c2 + d2 + 2ab + 2ac + 2bc + 2bd
(a + b)(a - b) の展開
(a + b)(a - b) を丁寧に展開してみましょう:
(a + b)(a - b) = a2 - ab + ab + b2 = a2 - b2
この結果も重要なので公式として覚えます:
(a + b)(a - b) = a2 - b2 [3]
この公式は次のような掛け算に応用できます:
21 × 19 = (20 + 1)(20 - 1) = 202 - 12 = 399
51 × 49 = (50 + 1)(50 - 1) = 502 - 12 = 2499
このような計算も次のシリーズでたくさん練習しますので、今は「なかなか便利な公式だねー」ぐらいに思っておいてくださいな。
問題③ 次の式を展開してください
(1) (x + 1)(x - 1) (2) (x + y + 1)(x + y - 1)
問題③の解答
(1) (x + 1)(x - 1) = x2 - 1
(2) (x + y + 1)(x + y - 1) = (x + y)2 - 1 = x2 + 2xy + y2 - 1
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