今回から小数・分数を含んだ計算の学習がスタートします。
基本的のこのコーナーは中高生や大人の皆さんを対象とした「学び直し」ですから、小学生の頃とは違ったアプローチで、簡単な整数論の話なども絡めながら、より体系的に割り算について学んでいくことになります。特にこの初回は今後の全ての計算技術に関わってくる記事ですので、じっくり丁寧に読んでしっかりと理解してください。
小さな既約分数を覚えます
さて、たとえば 3 / 5 のように「もうこれ以上は約分できないよ」という分数のことを 既約分数 とよびます。もう少し正確な言い方をすると「分子と分母が互いに公約数をもたない(互いに素である)」分数です。いくつかの小さな既約分数の値(小数)を知っておくと、大きな桁の割り算であっても楽に計算できることが多いのです。
一番簡単な既約分数として思いつくのは、
ですね。この関係は誰でも知っています。では 1 / 3 はどうでしょう。
というように果てしなく続く少数です。これもご存知の方が多いと思います。この値を知っていれば 3 を分母とするもう1つの既約分数も
というように簡単に計算することができます。 ...... をずっと書くのも大変なので今後は四捨五入して
と書くことにします。分子が分母より大きい場合は
というように整数部分は取り分けて計算します。こうした手法を用いることによって原理的に分母が 3 の分数は全て計算できます。次は 1 / 4 です。
ですね。2 / 4 は = 1 / 2 と約分できるので(つまり既約ではないので)とばして、
と計算できます。 1 / 5 も簡単な形をしています:
なので 1 / 5 の倍数の計算はとても簡単です。
知っておくと便利な既約分数を以下にまとめておきます:
1 / 8 = 0.125, 1 / 9 = 0.111, 1 / 20 = 0.05, 1 / 25 = 0.04
問題① 上の表を参照して次の式を計算してください
(1) 5 / 4 (2) 3 / 5 (3) 3 /8 (4) 5 / 9 (5) 16 / 25
問題①の解答
(1) 5 / 4 = 1 + 1 / 4 = 1 + 0.25 = 1.25
(2) 3 / 5 = 3 × 0.2 = 0.6
(3) 3 / 8 = 3 × 0.125 = 0.375
(4) 5 / 9 = 5 × 0.111 = 0.555
(5) 16 / 25 = 16 × 0.04 = 0.64
小数から分数へ
小数を分数へ変換すると掛け算が簡単になることがあります。たとえば
というような計算です。基本の 1 / 5 = 0.2 から素早く 4 / 5 = 0.8 が連想できるように訓練しておかなくてはなりません。もう少し例をみましょう。
48 × 0.375 = 48 × 3 / 8 = 18
48 × 0.875 = 48 × 7 / 8 = 42
最後の 0.875 は 8 / 8 = 1 より 0.125 少ない値だから 7 / 8 と連想します。少し難しいかもしれませんが、訓練を重ねるうちに自然と思い浮かぶようになります。
問題② 次の式を計算してください
(1) 75 × 0.28 (2) 400 × 0.65 (3) 375 × 0.04 (4) 56 × 0.625
問題②の解答
(1) 75 × 0.28 = 3 × 25 × 7 / 25 = 21
(2) 400 × 0.65 = 400 × 13 / 20 = 20 × 13 = 260
(3) 375 × 0.04 = 3 × 125 × 1 / 25 = 3 × 5 = 15
(4) 56 × 0.625 = 56 × 5 / 8 = 7 × 5 = 35
(2) の 0.65 ⇒ 13 / 20 少し難しい変換。 1 / 20 = 0.05 から 0.5 = 10 / 20 を基準に 0.15 = 13 / 20 を足すと考えます。