もしもニュートン力学にしたがう世界だったら ...... (古典力学の決定論的世界観)

 世間には
 「人間は自分の運命に抗うことはできない」
 「未来は自分自身の意思で変えられる」
 という相反する2つのスタンスがありますけど、皆さんはどちらの説を支持しますか?
 今回のシリーズでは科学的な観点から「未来は決まっているのかな」ということをお話してみたいと思います。科学的観点などと偉そうなことを言いましたけど、これは未だに解明されていない大問題であって、もちろん私のしょぼい頭であれこれ考えたところで何ひとつ解決に貢献できるものでもありません。結論らしきお話をする次回記事で述べることは私の個人的見解に過ぎないので、「ふーん。こんな意見もあるんだね」ぐらいの気持ちで流し読みしてくださいね。

 こういう途方もないテーマを選んだのは、シリーズを通して「ニュートン力学(古典力学)」と「量子力学」の違いを知ってもらえたらいいなと考えたからです。
 

絶対にぶれません!

 初回は「絶対に未来は決まっている! ぶれることなんてありえない!」という立場、つまり「ニュートン力学」についてお話します。その名の通り、 17 世紀の物理学者アイザック・ニュートンが土台を作り、20 世紀に入るまで自然界の絶対的法則であると考えられていた理論です。現代でも高校までに習う物理学の大部分はこの法則です。皆さんも学校の理科や物理で「初速 20 m/s 、仰角 45 °で球を射ち出したときの水平方向の到達距離を求めなさい」というような問題を1度や2度は見たことがあると思います。

 で、この問題の答えは1つしかありませんよね。ちょっと計算をしくじって 1 m ずれたって点数はもらえません。まして「こっちに行くかもしれないしー、あっちに行くかもー」なんて答案を書いたら、先生に呼び出されて「ふざけてんのか!」と怒られることになるでしょう。これが古典力学的な世界観です。

 「はあ!? 何それ!?」と驚かれるかもしれませんが、でも本当にそうなのです。初速と角度さえ決めてしまったら、答えは一寸違わず1つに決まってしまう、というのが「ニュートン力学」の絶対的な仕組みなのです。高校で習うような簡単な問題であろうと、天文学者が行う複雑な軌道計算であろうと本質は全く一緒です。
 

同じ条件を整えることは不可能です

「でもそれは紙の上で計算するからでしょう。現実はもっと複雑だから、同じ投げ方したってボールが必ずしも同じところに落ちるとは限らないよ」
と思う人もおられるかもしれません。確かに現実ははるかに複雑で、空気抵抗もありますし、風の吹き方も日によって違います。発射したときに球に回転がかかっていると軌道が曲がったりするし、実はコリオリの力という地球の自転の影響なんかもほんの僅かにあったりします。そもそも球を構成する無数の原子だって色々な方向に振動しています。現実はとにかく考えなくてはならない細かい要素が山ほどあって、全ての条件を同じにして実験するなんてことはほとんど不可能です。

 機械を上手く調整して球に回転がかからないようにしたり、無風の実験室を用意するなどして、かなり頑張って理想的な条件を整えても、千分の 1 mm のスケールあたりでずれると思います。ナノメートル単位で測定すれば、もう目も当てられないような結果になるでしょう。地球自体が振動してしまっているし、月の引力もあったりするので、それはもうどうしようもありません。

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古典力学の世界観

 しかしそれはあくまで人間の都合であって「ニュートン力学」の本質とは何の関係もありません。仮にあらゆる条件を(月をなくしてしまうとか、地球の自転軸のぶれをゼロにすることまで徹底して)全く同じにして実験を繰り返すことができるなら、ボールは必ず毎回同じところに落ちる、というのが「ニュートン力学」に備わった仕組みです。

 これは何を意味しているのかというと、もし世界が完全に「ニュートン力学」によって支配されているならば、人間には把握しきれない複雑な要素が数限りなく作用しているにせよ、ともかくもある瞬間の状態が決まっているのだから、それによって次の状態も必然的に決まったものとなる、ということです。

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人間の思考も法則から逃れることはできません

 「意思」だって例外ではありません。人間の脳だって原子の集まりですし、思考は脳神経細胞同士の電気信号のやりとり(つまり電子の運動)によるものですから、そうした物質の振る舞いに無作為性がまったくないのなら、どうしたって「脇道にそれる」ことはできないのです。ある瞬間の状態が次の状態を決めるという単調な積み重ねで未来はたった1つに決まってしまいます。つまりあることを自分の意思で決めたと思っていても、そのように選択することが、この宇宙が始まったときからもうすでに決まっていた、ということです。

 そんなことを聞くと何だか絶望的な気分に陥ってしまいそうですが、自然界はそれほど単純にできてはいません。実は電子のようにとても小さな物質は「ニュートン力学」とは全く異なった仕組みで動いているのです。それが20世紀に発見された「量子力学」という理論です。次回は小さな物質の不思議な振る舞いについてお話したいと思います。


 

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