三角不等式 Triangle inequality
一般に2つのベクトル \(\vec{a},\:\vec{b}\) について
\[\begin{align*}|\vec{a}+\vec{b}| \leq |\vec{a}|+|\vec{b}| \tag{1} \\[6pt]
|\vec{a}-\vec{b}| \geq |\vec{a}|-|\vec{b}| \tag{2} \end{align*}\]
という関係が成り立ちます。
図で見ると特に (1) は自明のような関係で、一般によく知られる
三角形の2辺の和は、他の1辺より大きい
という事実を定式化したものです。基本的に三角形に関する性質ですが、2つのベクトルのなす角が 0 であっても成立する関係ですから、これはそのまま1次元空間、すなわち数直線上の実数同士の関係としても成立します。
三角不等式の証明
ベクトルの内積を使うと証明は簡単です。
\[\vec{a} \cdot \vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta\]
|cosθ| ≦ 1 ですから、
\[|\vec{a} \cdot \vec{b}|=|\vec{a}||\vec{b}||\cos \theta| \leq |\vec{a}||\vec{b}|\]
すなわち内積のとりうる範囲は
\[-|\vec{a}||\vec{b}| \leq \vec{a} \cdot \vec{b} \leq |\vec{a}||\vec{b}|\]
となるので、
\[\begin{align*}|\vec{a}+\vec{b}|^2=&|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2+2\vec{a} \cdot \vec{b}\\[6pt]
\leq & |\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2+2|\vec{a}||\vec{b}|=(\vec{a}+\vec{b})^2\end{align*}\]
すなわち
\[|\vec{a}+\vec{b}| \leq |\vec{a}|+|\vec{b}| \tag{1}\]
が成り立ちます。同様にして
\[\begin{align*}|\vec{a}-\vec{b}|^2=&|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-2\vec{a} \cdot \vec{b}\\[6pt]
\geq & |\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-2|\vec{a}||\vec{b}|=(\vec{a}-\vec{b})^2\end{align*}\]
となるので、
\[|\vec{a}-\vec{b}| \geq |\vec{a}|-|\vec{b}| \tag{2}\]
が成立します。(1), (2) ともに等号が成立するのは
\[|\cos \theta|=1 \quad \mathrm{or} \quad |\vec{a}||\vec{b}|=0\]
のときです。
実数 a, b に関する三角不等式
以上の議論で θ = 0 とおけば、全てのベクトルは直線上に並ぶことになります。この場合においても三角不等式は成り立ちますから、各ベクトルを実数に置き換えて(1次元では成分がそのままベクトルの大きさに等しくなります)、直ちに
\[\begin{align*}|a+b| \leq |a|+|b| \tag{3} \\[6pt]
|a-b| \geq |a|-|b| \tag{4}\end{align*}\]
という公式を得ることができます。
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