エクセルには円周率πに関する2つの関数 PI と SQRTPI が用意されています。これらの関数を使って円の面積や球の体積などを計算できます。
【Excel】PI 関数
Excel 関数 PI は円周率πの近似値を返します。引数は不要ですが、() は必ず記述します。セルに
=PI()
と入力するだけで円周率の 15 桁の近似値 3.14159265358979 を返します。
エクセルの PI() 関数を使って円周の長さを計算してみましょう。半径 r の円周の長さは 2πr です。たとえば半径 5 の円の全周の長さは 10π なので Excel では
=10*PI()
という数式で計算できます。
半径 r の円の面積を求める公式はπr2 です。たとえば、半径 2 の円の面積は 4πなので、Excel では
=4*PI()
によって計算できます。戻り値は 12.566 です。
長軸半径 a, 短軸半径 b の楕円の面積はπab です。たとえば、A1 セルに長軸半径、A2 セルに短軸半径を入れておくと、楕円の面積は
=A1*A2*PI()
で計算できます。
半径 r の球の体積は 4πr3/3 なので、Excel で半径 1 の球の体積を計算するときは
=4*PI()/3
と入力します。戻り値は 4.189 です。半径 2 の球の体積であれば
=4*2^3*PI()/3
と入力して計算させます (戻り値は 33.510)。
3 軸の長さが a, b, c の楕円体の体積は 4πabc/3 です。a, b, c がそれぞれセル A1, A2, A3 に入力されている場合、楕円体の体積を計算するときは
=4*A1*A2*A3*PI()/3
と記述します。
【Excel】SQRTPI 関数
Excel の SQRTPI関数 は
=SQRTPI(数値)
のように記述して [数値×π] の平方根 の値を返します。たとえば
=SQRTPI(2)
と入力すると 2πの平方根 2.507 を得ます。円周率πの平方根は数学や物理学の分野で頻繁に登場する値です。たとえば exp(-x2) を -∞ から ∞ まで積分すると √πになります。直交多項式などで関数を規格化したときの係数のなかにも円周率の平方根 √π が現れることがあります。
円周率はなぜ π という文字を使う?
小学生の頃には円周率を 3.14 と習いますね。中学生になると円周率のことを π という文字を使い始めます。π はギリシア文字です。英語で使用するアルファベットの p にあたります。
数学では π に限らず、たくさんのギリシア文字を使います。α、β、γ、δ、ε などです。でもなぜ、この現代において英語のアルファベットでなく、わざわざ見慣れないギリシア文字などを使うのでしょうか? 理由は単純。英語のアルファベットでは種類が足りないからです。数学では慣用的に実数の未知数を x, y, z 、複素数を z 、素数を p 、整数を i, j, k, l、自然数を m, n などで表します。特に強制的な決まりではないし、使い方の境界線は曖昧なのですけど、こんな感じで慣用的な使用例が増えてくると 26 種類のアルファベットなんてあっという間に使い切ってしまいます。
「とても小さい数だってことを文字で表したいんだだ、どの文字を使うべきかな? e にでもしとくか」
と考えたとき、
「ちょっと待てよ? e はすでにネイピア数(自然対数の底)に使われてるじゃないか! 仕方ないから e に対応するギリシア文字 ε で我慢しくか」
という感じでギリシア文字を採用していくのです。
1631 年に π を最初に採用したウィリアム・オートレッドさんがこんなふうに考えたかどうか分かりませんが、もし p を選んでいたら、数学において特に重要な素数 p の記号とかぶってしまいますから、かなりややこしいことになっていたのは確かです。というより「紛らわしい記号を使うな!」と怒られるだけで、円周率には別の誰かが別の文字を当てたことでしょう。さて、このウィリアムさんは、ギリシア語で「円周」を意味する περίμετρος (ペリペレイア)、或いは περιφέρεια (ペリフェイリア)の頭文字をとって「半円の弧の長さ」を表す文字に π という字を当てました。「直径 1 の円の周長」という現代と同じ定義で π を用いたのは 1700 年頃、レオンハルト・オイラーによるものと言われています。
歴史的にギリシア語の学術語彙は大量に英語圏に流入し、数多くの英単語を形成しています。ギリシア語で「周囲」を表す接頭辞 περι(ペリ)も perimeter(周囲)、pericarp(果皮)、period(期間)、periodic(周期的な)、periphery(周辺・外圏)、periphrastic(回りくどい)のような英単語を生んでいます。
【書籍紹介】πの歴史
今からおよそ 4 千年前、すでに古代エジプトでは円周率の近似値が π = (16/9)2 であることが知られていました。彼らはどのようにしてその値を知ったのでしょうか?
本書『πの歴史』では、それを推測するために杭とロープと砂だけで円周率を求める方法について述べられています。このように少々荒っぽく思われる方法に始まって、円の近似法も時代を経ると徐々に精度を高めていきます。古代ギリシャ人は幾何学的手法を用いてより良い値を算出し、ニュートンは積分を用いて非常に高い精度の近似値を求めることに成功しています。やがて「精度」だけでなく「計算の速さ」も重視されるようになり、マチンはグレゴリーの級数を改良してより速く収束する円周率の級数展開を発見しました。天才数学者オイラーは無限乗積という美しい数式で円周率を表現し、確率論の発展はモンテカルロ法による近似計算を生みだしました。さらに高度な代数学によって円周率は超越数(√2 とは異なる無理数)であることが示されます。そして 20 世紀に入るとコンピュータの発達に伴い、実用性とは全く無縁の「巨大な桁数」を求める競争が過熱していきます … と駆け足で全体を俯瞰しましたが、円周率にまつわる個々のエピソードはとても面白く、図形や数式もきちんと載せられています(煩わしければ、そこを飛ばしても歴史の流れは理解できます)。歴史的背景もふんだんに散りばめられているので、人類と円周率 4000 年の歴史をダイナミックに感じることのできる珠玉の1冊です。【書籍紹介】円周率を計算した男
関孝和は現代でもその名を広く知られた和算の大家ですが、その弟子のなかに建部賢弘という天才的な算術家がいました。彼は独自に円周率を求める計算式を発見しましたが、それは海の彼方の大数学者オイラーと同じ方法だったのです。
洋の東西を問わず、ひと口に算術家(数学者)といっても、算術との向き合い方や捉え方、信念は人によって様々な個性があります。建部賢弘は師である関孝和とは異なる美学をもっていました。彼は師との軋轢を抱えながらも円周率の美しい表式を明らかに … 表題作『円周率を計算した男』を始め、『風狂算法』、『初夢』、『やぶつばきの降り敷く』など江戸時代に活躍した算術家たちの生涯を、詳細な資料をもとに描いた六篇を収録した時代小説です。
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【AI連載小説】数学のリズム、エクセルの旋律(2)
「PI関数を使わずに円周率を計算してみよう!」
Excel VBAサークルのメンバーたちは、新しいプロジェクトとして円周率を計算する方法について意見を交換していた。今回のプロジェクトでは、エクセルのPI関数を使わずに、別の手法で円周率を求めることに挑戦することになっていた。
五百城真琴:さて、エクセルで円周率を計算する方法について考えてみよう。PI関数を使わずにπを計算するってのは面白そうだね。
村雨研伸:確かに、PI関数に頼らない方法ってのはちょっとした挑戦だよね。どんな手法が考えられるかな?
雨宮隆治:もしかして、アルキメデス法を考えてみるのはどうだろう? 半径をrとしたとき、正多角形の内接円と外接円の面積比を使って円周率を計算する方法だよ。
真琴:それは面白いね。具体的な計算手順を教えてくれる?
研伸:まず、正n角形の内接円と外接円の半径をそれぞれr1とr2としたとき、面積比はr1^2 : r2^2だよ。それを元に円周率を求めることができるんだ。
隆治:そして、nを増やせば増やすほど正多角形が円に近づくから、計算精度を高めることができる。
真琴:なるほど、アルキメデス法を使った円周率の計算は数学的にも面白いし、Excelでも実装しやすそうだね。
研伸:他にも、ニーニョ法やモンテカルロ法なども考えられるよ。ただし、これらの手法は精度や計算の複雑さに違いが出るから検討が必要だね。
隆治:次回までに、それぞれの手法について詳細を検討して、どれが最も適しているか検証してみよう。
真琴:いいアイディアだ。それぞれの手法を詳しく理解して、円周率計算に挑戦してみよう。