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tan1°が無理数であることを証明します

Algebra(代数学)問題も無理数証明 3 連続でそろそろ飽きてしまったかもしれませんが、さすがに今回で最後にします。締め括りは京大入試で出題された有名な問題から。

【AG03】tan1° は無理数?

$\tan 1^\circ$ が無理数 であることを証明してください。
 
【ヒント】「さすが京大! なんて難しい問題なんだ!」と叫ぶ前に落ち着いてください。見た目ほど難しい問題ではありません。むしろ前回までの AG01 や AG02 のほうが難しかったぐらいです。タンジェントに関する「ある公式」を思い出せば、意外と短い行数であっさり解答が終わってしまいます。ちなみに実際の問題文は「$\tan 1^\circ$ は有理数か?」という素気ないものでしたが、もし何か勘違いして「$\tan 1^\circ$ を有理数であることを証明しよう!」と思ったらちょっと面倒なことになったかもしれませんね。しかし、たぶん途中で「$\tan 1^\circ$ はやっぱり無理数っぽい」と気づくと思います。
 【解答】$\tan x$ に関する公式の中で「タンジェントだけが含まれた公式がなかったかなあ」と記憶を探るのです。サインとかコサインとか別の三角関数が混ざっていたら使いにくいですからね。おそらく加法定理の公式が頭に浮かぶと思います。
 \[\tan(\alpha +\beta)=\frac{\tan\alpha+\tan\beta }{1-\tan\alpha\:\tan\beta }\]
証明問題で加法定理の公式がなぜ頻繁に登場するのかというと、$\alpha$ や $\beta$ に好きな値を入れることができて使い勝手が良いからです。加法定理は「2 つの角を関係づける式」と覚えておいてください。上の式は $\alpha$ が決まれば、$\tan$ を介して $\beta$ が決まるということです(具体的に計算できるかどうかは別問題として関係式を記述できるということです)。

本問では、こうした関係から「数学的帰納法の $k$ と $1$ を入れるとなんとかなりそうだね」と考えます。さっそくやってみましょう。背理法で証明します。
 
$\tan 1^\circ$ が有理数だと仮定します。
任意の $k$ で $\tan k$ が有理数だと仮定すると、
 \[\tan(k+1)=\frac{\tan k +\tan 1^{\circ}}{1-\tan k\:\tan 1^{\circ}}\]
これは [有理数] / [有理数] の形ですから有理数です。
よって、$\tan 1^\circ$ が有理数と仮定したので $\tan 2^\circ$ も有理数であり、$\tan 3^\circ$ も有理数 … $\tan 59^\circ$ も有理数、そして、$\tan 60^\circ$ も有理数ということになりますが、これはおかしいですね。 $\tan 60^\circ=\sqrt{3}$ なので無理数のはずです。遡って $\tan 1^\circ$ が有理数と仮定したことで、このような矛盾が生じたことになります。つまり $\tan 1^\circ$ は無理数です。

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