少なくとも1つの実数解をもちます

【AG14】少なくとも1つの実数解をもつことの証明

 実係数をもつ3つの方程式
\[\begin{align*}ax^2+2bx+c=0\qquad \qquad (1)\\[6pt]bx^2+2cx+a=0\qquad \qquad (2)\\[6pt]cx^2+2ax+b=0\qquad \qquad(3)\end{align*}\]のうち、少なくとも1つは実数解をもつことを証明してください。(広島大一部改)
 
【ヒント】命題の否定が成立しない ことを示します。「少なくとも1つは実数解をもつ」の 否定命題 は?
 

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【解答】背理法を用います。「3つの方程式のうち少なくとも1つは実数解をもつ」の否定命題は「3つの方程式が全て虚数解をもつ」です。これを 真実だと仮定 します。それぞれの方程式の判別式を $D_1/4,\ D_2/4,\ D_3/4$ とおくと
 
\[\begin{align*}\frac{D_1}{4}=b^2-ac \lt 0\\[6pt]\frac{D_2}{4}=c^2-ab \lt 0\\[6pt]\frac{D_3}{4}=a^2-bc \lt 0\end{align*}\]
が全て成立しているはずです。全て加えると
 
\[\frac{1}{4}\:(D_1+D_2+D_3) \lt 0\]
となるはずですが、実際に計算すると
 
\[\begin{align*}\frac{1}{4}(D_1+D_2+D_3)=&\:a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca\\[6pt]=&\:\frac{1}{2} \:\{ (a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2 \} \geq 0\end{align*}\]
となって矛盾しています。したがって方程式 (1), (2), (3) のうち少なくとも1つは実数解をもつことが証明されました。

【AG15】係数に複素数を含む二次方程式

 二次方程式
\[x^2-(1+3\:i)\:x+k=0\]が \(1+i\) を解にもつように定数 \(k\) の値を定め、もう1つの解を求めてください。

【ヒント】解の1つがわかっているので、それを代入すれば良いのですけど、\(k\) をどう置くかがポイントです。
 

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【解答】\(k\) は実数とは書いていないので、複素数として
 
\[k=a+bi\]
とおいて方程式に代入します。
 
\[x^2-(1+3i)x+a+bi=0\]
 解の1つ \(1+i\) を代入して整理すると
 
\[a+2+(b-2)\:i=0\]
となるので、 \(a=-2,\:b=2\) すなわち \(k=-2+2\:i\) を得ます。よって方程式は
 
\[x^2-(1+3i)x-2+2\:i=0\]
となり、解の公式によって
 
\[x=\frac{1}{2}\: \{ 1+3\:i \pm \sqrt{-2\:i} \}\]
となります。ここで \((1-i)^2=-2\:i\) より解は
 
\[x=1+i,\quad 2\:i\]
となります。

【補足】最後のほうで √ の中に虚数単位が現れたので、慣れていないと処理に困るかもしれません。 \((1-i)^2=-2\:i\) という計算式をすぐに思いつかない場合は、\(1+i\) という1つの解が予めわかっているので、\(\sqrt{-2\:i}=\sqrt{D}\) とおいて、

\[\frac{1}{2}\: \{ 1+3\:i \pm \sqrt{D} \}=1+i\]
という式から

\[\sqrt{D}=\pm (1-i)\]
を得ることができます。

【AG16】他の解の平方となるように実数 $k$ の値を定めます

 二次方程式
\[x^2+kx-k=0 \quad (k\neq0)\]の1つの解が他の解の平方になるように実数 \(k\) の値を定めてください。

【ヒント】2つの解を設定したあとに、そのまま方程式に代入したりすると大変面倒なことになります。別の方法を考えてみましょう。
 

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【解答】2解を \(\alpha,\:\alpha^2\) とおくと解と係数の関係より
 
\[\alpha+\alpha^2=-k,\quad \alpha^3=-k\]
となるので、
 
\[\alpha+\alpha^2=\alpha^3\]
とおくことができます。すなわち
 
\[\alpha(\alpha^2-\alpha-1)=0\]
という \(\alpha\) についての方程式を解けばよいのですが、 \(k\neq0\) という条件があるので \(\alpha=0\) は適しません。よって
 
\[\alpha^2-\alpha-1=0\]
の2解である
 
\[\alpha=\frac{1\pm \sqrt{5}}{2}\]
が条件を満たすことになります。よって
 
\[k=-\alpha-\alpha^2\]
によって求めることができますが、\(\alpha^2-\alpha-1=0\) の関係を使うことで
 
\[k=-\alpha-\alpha-1=-2\alpha-1=-2\pm\sqrt{5}\]
と楽に計算することができます。

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