Excel VBA 数学教室ではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

偶数項と奇数項の和が定義された数列

【SQ35】偶数項と奇数項

 数列 $\{a_n\}$ は漸化式
\[a_1=\frac{1}{2},\quad a_n+a_{n+1}=\frac{1}{n(n+2)}\,(n\geq 1)\]
を満たすものとし、$a_1$ から $a_n$ までの和を $S_n$ で表します。

(1) $m$ を任意の自然数とするとき、$S_{2m}$ と $S_{2m+1}$ を $m$ で表してください。
(2) $a_{2m}$ と $a_{2m+1}$ を $m$ で表してください。
(3) 数列 $\{a_n\}$ の一般項 $a_n$ を $n$ で表してください。(センター試験一部改)

【ヒント】たとえば $S_{3}$ を求めるときは、初項と漸化式を使って
\[S_3=a_1+(a_2+a_3)=\frac{1}{2}+\frac{1}{2\cdot 4}=\frac{5}{8}\]
と計算することができます。$S_{4}$ は
\[S_4=(a_1+a_2)+(a_3+a_4)=\frac{1}{1\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 5}=\frac{2}{5}\]
と計算できます。このように、$S_n$ に含まれる項数が奇数個か偶数個かで和のとりかたが違うので、場合分けして考えます。

【解答】(1) $S_{2m}$ は奇数項と偶数項のペアの和として
\[S_{2m}=\sum_{k=1}^{m}(a_{2k-1}+a_{2k})\]
と表せます。与えられた漸化式より、
\[a_{2k-1}+a_{2k}=\frac{1}{(2k-1)(2k-1+2)}=\frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\]
となります。右辺を部分分数分解すると
\[a_{2k-1}+a_{2k}=\frac{1}{2} \left(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\right)\]
となるので、和をとると
\[\begin{align*}S_{2m}&=\frac{1}{2}\sum_{k=1}^{m}\left(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\right)\\[6pt]&=\frac{1}{2}\left\{\left(\frac{1}{1}-\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\right)+ \cdots\ +\left(\frac{1}{2m-1}-\frac{1}{2m+1}\right)\right\}\\[6pt]&=\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{2m+1}\right)=\frac{m}{2m+1}\end{align*}\]
が得られます。$S_{2m+1}$ は

\[S_{2m+1}=a_1+\sum_{k=1}^{m}(a_{2k}+a_{2k+1})\]
と表せます。与えられた漸化式を使うと

\[a_{2k}+a_{2k+1}=\frac{1}{(2k)(2k+2)}=\frac{1}{4k(k+1)}\]
となり、右辺は

\[a_{2k}+a_{2k+1}=\frac{1}{4}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)\]
のように部分分数分解できるので、

\[\begin{align*}S_{2m+1}&=\frac{1}{2}+\frac{1}{4}\sum_{k=1}^{m}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)\\[6pt]&=\frac{1}{2}+\frac{1}{4}\left(1-\frac{1}{m+1}\right)=\frac{3m+2}{4(m+1)}\end{align*}\]
となります。

(2) $a_{2m}=S_{2m}-S_{2m-1}$ なので、(1) の結果を用いて
\[a_{2m}=\frac{m}{2m+1}-\frac{3(m-1)+2}{4\{(m-1)+1\}}=\frac{-2m^2-m+1}{4m(2m+1)}\]
となります。また、与えられた漸化式により
\[a_{2m}+a_{2m+1}=\frac{1}{2m(2m+2)}\]
が成り立つので、
\[a_{2m+1}=\frac{1}{2m(2m+2)}-a_{2m}=\frac{2m^2+3m+2}{4(m+1)(2m+1)}\]
が得られます。(3) (2) で得た $a_{2m}$ の式を変形すると
\[\begin{align*}a_{2m}&=\frac{-2m^2-m+1}{4m(2m+1)}\\[6pt]&=\frac{-m(2m+1)+1}{4m(2m+1)}\\[6pt]&=\frac{1}{4m(2m+1)}-\frac{1}{4}\end{align*}\]
$n=2m$ とおくと、
\[a_{n}=\frac{1}{2n(n+1)}-\frac{1}{4}\]
となります。同様に $a_{2m+1}$ の式を変形すると
\[\begin{align*}a_{2m+1}&=\frac{2m^2+3m+2}{4(m+1)(2m+1)}\\[6pt]&=\frac{(m+1)(2m+1)+1}{4(m+1)(2m+1)}\\[6pt]&=\frac{1}{4(m+1)(2m+1)}+\frac{1}{4}\end{align*}\]
$n=2m+1$ とおくと、
\[a_n=\frac{1}{2n(n+1)}+\frac{1}{4}\]
となります。したがって、$2$ 以上の自然数 $n$ について
\[a_n=\frac{1}{2n(n+1)}+\frac{(-1)^{n+1}}{4}\]
と表すことができます。$n=1$ のとき、$a_1=1/2$ となって、与えられた初項と一致するので、上の式は任意の自然数 $n$ に対して成り立ちます。

【SQ36】すべての項が 0 以上となるための必要十分条件

$b\gt 0$, $c\gt 0$ とし、数列 $\{a_n\}$ は初項 $a_1$ から順次

\[a_n=ba_{n-1}+(-c)^{n-1}\quad (n\geq 2)\]
によって定められるものとします。$a_1\geq 1$ のとき、すべての $n$ について $a_n\geq 0$ となるために $b$, $c$ が満たすべき必要十分条件は $b\geq c$ であることを証明してください。(大阪大一部改)

【ヒント】難関国立大の入試問題です。これまで出題した SQ シリーズの中では一番難しい問題かもしれません。この問題で証明すべきことは

① $b\geq c \quad \Longrightarrow \quad a_n\geq 0$ (十分条件)
② $a_n\geq 0 \quad \Longrightarrow \quad b\geq c$ (必要条件)

の2つです。$a_n$ の表式が得られれば、①を証明することはそれほど難しくありませんが、②を証明するにはちょっとした工夫が必要です。

【解答】与えられた漸化式
\[a_n=ba_{n-1}+(-c)^{n-1}\quad (n\geq 2)\]
の両辺を $b^n$ で割ります。
\[\frac{a_n}{b^n}=\frac{a_{n-1}}{b^{n-1}}+\frac{1}{b}\left(-\frac{c}{b}\right)^{n-1}\]
$f_n=a_n/b_n$ とおくと、
\[f_n-f_{n-1}=\frac{1}{b}\left(-\frac{c}{b}\right)^{n-1}\]
$2$ 項間の差が $n$ の関数となっているので、$f_n$ は階差数列です。
\[\begin{align*}f_n&=f_1+\sum_{k=1}^{n-1}(f_{n+1}+f_{k})\\[6pt]
&=\frac{a_1}{b}+\frac{1}{b}\sum_{k=1}^{n-1}\left(-\frac{c}{b}\right)^k\\[6pt]
&=\frac{a_1}{b}+\frac{1}{b}\frac{1-\left(-\cfrac{c}{b}\right)^{n-1}}{1-\left(-\cfrac{c}{b}\right)^n}\\[6pt]&=\frac{a_1}{b}-\frac{c}{b(b+c)}\left\{1-\left(-\frac{c}{b}\right)\right\}\end{align*}\]
したがって、$f_n=a_n/b_n$ より $a_n$ の表式
\[a_n=b^n\left\{\frac{1}{b}\left(a_1-\frac{c}{b+c}\right)-\frac{1}{b+c}\left(-\frac{c}{b}\right)^n\right\}\]
が得られます。$a_n\geq 0$ であるときに、$b\geq c$ が成り立つこと(必要条件)を背理法で証明します。すなわち $a_n\geq 0$ であるときに $b \lt c$ であると仮定すると、任意の $a_1,\ b,\ c$ を選んだときに、十分に大きな偶数 $n=2m$ をとることによって $a_n$ を負の値にすることができます。これは $a_n\geq 0$ とした仮定に反します。したがって、$b\geq 0$ が成立します。

$a_n$ の表式を少し変形して
\[a_n=b^{n-1}\left(a_1-\frac{c}{b+c}\right)-\frac{(-c)^n}{b+c}\]
と書き直します。$b\geq c$ が成り立つならば、$a_1\geq 1$ より、
\[a_n\geq b^{n-1}\left(1-\frac{c}{b+c}\right)-\frac{(-c)^n}{b+c}=\frac{b^n-(-c)^n}{b+c}\geq 0\]
が成立することがわかります(十分条件)。よって、$a_n\geq 0$ となるために $b$, $c$ が満たすべき必要十分条件は $b\geq c$ となります。■

エクセルや数学に関するコメントをお寄せください