相加平均と相乗平均
よく知られた相加平均と相乗平均の関係です。2 数、3 数に関する公式はよく目にすると思います。正の数 $a,\:b,\:c$ について
\[\begin{align*}\frac{a+b}{2}&\geq \sqrt{ab}\tag{1}\\\frac{a+b+c}{2}&\geq \sqrt[3]{abc}\tag{2}\end{align*}\]
(1) については $a=b$, (2) については $a = b = c$ のとき等号成立します。
相加・相乗平均の関係は一般に $n$ 個の数 $a_1,\:a_2,\:\cdots\:a_n$ について成り立つことが知られています。
\[\frac{\sum_{i=1}^{n}a_{i}}{n}\geq\left[\:\prod_{i=1}^{n}a_{i}\:\right]^{1/n}\tag{3}\]
$a_1=a_2=\:\cdots\:=a_n$ のとき等号が成立します。
$\prod$ は $i$ について $1$ から $n$ まで変化させながら $a_i$ を掛けるという記号です。もう少しわかりやすい表記で書くと次のようになります。
\[\frac{a_{1}+a_{2}+\cdots +a_{n}}{n}\geq\:\sqrt[n]{a_{1}\:a_{2}\:\cdots\:a_{n}}\tag{4}\]
【相加・相乗平均の関係の証明】(3) の証明にはマクローリン級数から得られる不等式 $\exp{x}\geq 1+x$ を用います。ここで、
\[m=\frac{\sum_{i=1}^{n}a_{i}}{n},\quad x=\frac{a_{i}}{m}-1\]
とおくと、
\[\exp\left(\:\frac{a_{i}}{m}-1\:\right )\geq\frac{a_{i}}{m}\]
が得られます。すべての $i$ について辺々を掛け合わせると
\[\exp\left(\:\frac{a_{1}}{m}-1\:\right)\cdots \exp\left (\:\frac{a_{n}}{m}-1\:\right)\geq\frac{a_{1}}{m}\:\cdots\:\frac{a_{n}}{m}\tag{*}\]
すなわち
\[\exp\left (\frac{\sum_{i=1}^{n}a_{i}}{m}-n \right)\geq\frac{\prod_{i=1}^{n}a_{i}}{m^{n}}\]
が成り立ちます。定義より $\sum a_i/m=n$ なので、
\[\begin{align*}&m\geq\left[\:\prod_{i=1}^{n}a_{i}\:\right]^{1/n}\\
&\sum_{i=1}^{n}a_{i}\geq n\left[\:\prod_{i=1}^{n}a_{i}\:\right ]^{1/n}\end{align*}\]
となることが示されました。また不等式 $\exp{x}\geq 1+x$ は $x=0$ のときに等号成立するので、(*) で等号が成立するためには全ての $i$ について
\[\frac{a_i}{m}-1=0\]
すなわち $a_i=m$ を満たす必要があります。したがって、
\[a_1=a_2=\:\cdots\:=a_n\]
が等号成立の条件となります(証明終)。
相加・相乗平均の関係は有名ですが、さらに相乗平均と調和平均の間に
\[\frac{2}{1/a+1/b}\leq\sqrt{ab}\]
の大小関係があることが知られています。
【証明】$1/a$ と $1/b$ について、相加平均と相乗平均の関係より
\[\frac{1}{a}+\frac{1}{b}\geq 2\: \sqrt{\frac{1}{ab}}\]
が成り立ちます(等号成立は $a=b$ のとき)。両辺の逆数をとると
\[\frac{2}{1/a+1/b}\leq \sqrt{ab}\]
となります。(証明終)
相加平均も含めた大小関係は
\[\frac{a+b}{2}\:\geq\:\sqrt{ab}\:\geq\:\frac{2}{1/a+1/b}\]
となります。
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