乗算表(乗法表)
ある法 (mod) における剰余類ごとの掛け算をまとめた乗算表(乗法表)を用意しておくと計算するときに便利です。特に合同式の割り算をするときには重宝します。
たとえば
という計算をしているわけで、
のどれもが答えとなります。普通は一番小さな正数を代表に選んで答えますが、合同式の計算は剰余類同士の演算であることは常に頭に入れておく必要があります。
一次合同方程式
を満たすような
つまり合同式では
という計算式が成り立つのです。このあたりの感覚は最初のうちは戸惑いますが、訓練を重ねるうちに慣れてきます。しかし
の解は(両辺の数字が等しければもちろん合同なので)、乗算表を用いなくても
乗算表を眺めると、
6 を法とする合同方程式
比較のために
という合同方程式は
という複数の解をもつことになります。
また
合同式の両辺を割ることのできる条件
そこでまず普通の等式と同じように合同式の両辺を同じ数で割ってもよいのかどうかを考えます。先ほどの例の
という合同方程式で両辺を
としてしまうと 2 つあるうちの一方の解しか得られないので明らかに誤りです。しかし法を
という合同方程式であれば、
として全く問題ありません。選んだ法によって、どうしてこのような違いが生じてしまうのでしょう。それについて述べているのが次の定理です。
(1)
(2)
【証明】証明には以前に学んだ定理 A11
を用います。
とおくと
となります。(証明終)
この定理は
という合同方程式を考えると、
なので両辺を
であれば、
ですから、両辺を
とすることができます。一般に
という合同方程式を考えたときに、
n元一次不定方程式の定義
乗算表を用いれば一次合同方程式は簡単に解けますが、現実的には法が小さい場合にのみ有効な方法です。たとえば
の一般的な解法を調べていくことにします。上式は
を意味するので、整数
と表せるので、一次合同方程式とは二元一次不定方程式に他ならないということになります。まずは不定方程式の定義を載せておきます。
ちなみに n元一次不定方程式を英語で書くと linear indeterminate equation with n-unknowns です。または古代アレクサンドリアの数学者ディオファントスにちなんでディオファントスの不定方程式とよばれることもあります。
不定方程式 ax + by = (a, b)
まず最初に次のような二元一次不定方程式
を考えます。すなわち定数項が係数
【証明】本講座の序盤で学んだユークリッドの互除法を用いて証明します。
のように表せて、
すなわち
を (2) に代入すると
(4) と (5) を (3) に代入すると
となります。これを繰り返していけば、
したがって
定理 C6 はいわゆる存在定理なのですが、その証明自体が具体的に解を求める手順になっています。この方法によって 1 組の解は求められますが、それを用いて不定方程式の一般的な解を得るためには以下の定理を用います。
[証明]
が成り立ちます。両辺を差し引いて
ごく簡単な例をひとつだけ載せておきます。
ユークリッドの互除法より
つまり
(1) より
したがって
という 1 組の解が得られます。定理 C7 より一般解は
となります。
不定方程式 ax + by = c が解をもつ条件
定理 C6 では右辺が
【証明】
まずは必要条件を示します。
なので、定理 A3 より
すなわち
次は十分条件を示します。
を満たす
となって、
aとmが互いに素である方程式に帰着
一元一次合同方程式と二元一次不定方程式は同等であって、その表現の仕方が異なるだけです。今回は前回までに得た定理等を用いて合同式による表現を見ていきます。まずは次の定理を証明します。
【証明】
と表せます。すなわち
となるので、前回記事の定理 C8
より、
とおいて (1) に代入すると
となるので、
を解くことに帰着します。(証明終)
この定理は全ての一元一次合同方程式が
一元一次合同方程式の解の個数
(1)
(2)
【証明】
(1)
と表せます。
によって、この方程式には整数解が存在するので、それを
と表すことができます。したがって
となり、合同方程式の解は全て同じ剰余類に属することになります。
(2)
なので、
が成り立ちます。ここで以前に証明した定理 C5
を用いると、
が成り立つことがわかります。したがって
と表せますが、
のときです (
で与えられます。(証明終)
一元一次合同方程式の具体例
簡単な合同方程式を解いてみます。
という合同方程式に帰着します。ここで
という合同式は当然成り立つので、(2) から (3) × 3 を引いて
という1つの解を得ます。これを
で与えられます。
となります。これは剰余類
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