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整数環のイデアルと剰余環

整数環のイデアルと剰余環(単位元をもつ可換環)

$m$ を整数とするとき、$m$ の倍数の集合を
\[m\mathbb{Z}=\{x\:|\:x=km,\:\:k\in\mathbb{Z}\}\]
と書きます。たとえば偶数全体の集合は
\[2\mathbb{Z}=\{\:\cdots\:-6,\:-4,\:-2,\:0,\:2,\:4,\:6\:\cdots\}\]
のように表されます。また整数全体の集合 $\mathbb{Z}$ を
\[a\equiv b\:(\mathrm{mod}\;2)\]
という同値関係で偶数集合と奇数集合に分けるとき、
\[\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}=\{C_0,\:C_1\}\]
のように書きます。

【定義C4】一般に $m$ の倍数の集合
\[m\mathbb{Z}=\{x\:|\:x=km,\:\:k\in\mathbb{Z}\}\]を整数環 $\mathbb{Z}$ の イデアル (ideal) とよび、整数全体の集合 $\mathbb{Z}$ を
\[a\equiv b\:(\mathrm{mod}\;m)\]という同値関係で分類するとき、
\[\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}=\{C_0,\:C_1,\:C_2,\:\cdots,\:C_{m-1}\}\]を剰余環 とよぶ。

ある整数 $a$ は剰余類 $C_a$ に属し、剰余類 $C_a$ は剰余環 $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ に属するので、厳密には
\[a\,\in\,C_a\,\in\,\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\]
と書くべきですが、これを省略して
\[a\,\in\,\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\]
と表すこともあります。本講座でも以降はこのように書きます。剰余環は文字通り「環の公理」、すなわち次の 8 個の法則を全て満たしています。

【剰余環の性質】$a,\:b,\:c\,\in\,\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ であるとき
\[a+b\,\in\,\mathbb{Z}/m\mathbb{Z},\:\:ab\,\in\,\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\][R1] 加法交換法則 $a+b\equiv b+a\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R2] 加法結合法則 $a+(b+c)\equiv (a+b)+c\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R3] ゼロ元の存在 $a+0\equiv 0+a\equiv a\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R4] 反元の存在  $a+(-a)\equiv (-a)+a\equiv 0\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R5] 乗法交換法則 $ab\equiv ba\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R6] 乗法結合法則 $(ab)c\equiv a(bc)\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R7] 単位元の存在 $1\cdot a\equiv a\cdot 1\equiv a\:\:(\mathrm{mod}\;m)$
[R8] 分配法則   $a(b+c)\equiv ab+ac,\quad (a+b)c\equiv ac+bc\:\:(\mathrm{mod}\;m)$

これらの法則が成り立つことは簡単に確認できます。たとえば [2] の場合、左辺から右辺を引いて
\[a+(b+c)-(a+b)-c\equiv 0\:(\mathrm{mod}\;m)\]
となることが示されます。剰余環に限らず、このような条件を満たすシステム R のことを厳密には「単位元をもつ可換環」といいますが、それを略して環 (ring) とよぶことにします。ちなみに「整数環」という言葉も出てきましたが、整数全体の集合 $\mathbb{Z}$ も環の公理を満たします。

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  1. 船橋秀 より:

    「イデアルは,環の準同型写像の核である」
    ということについて
    具体的に教えて頂けないでしょうか