一応、大学時代に理論物理学を学んだので(あとになって純粋数学やプログラミングのほうに関心が強いことに気づいたけど)、そろそろ自身のテリトリーの記事でも書こうかなと思い、サイエンス全般のカテゴリーを作ってみました。たぶん、物理や天文関連の記事が多くはなるとは思いますけど、その時々の興味によって生命科学や考古学なども混じると思います。他の記事に比べると、かなり不定期な連載になると思うので、まあ気が向いたときにお立ち寄りください。
エンタングルメントについてのざっくりした解説です
少し前にカナダのカルガリー大学が 6 km 以上の距離で量子テレポーテーションを成功させたというニュースがありました。近年では世界中の研究施設で同種の実験を成功させています。とても面白そうなので、今回と次回はこの量子テレポーテーションについてとりあげたいと思います。前編では量子テレポーテーションの原理であるエンタングルメント(Quantum entanglement)についてお話します。
近接作用という考え方
物質はお互いにその種類によって重力であったり、電磁気力であったり、あるいは核力であったりと、ともかく何かしらの影響を与え合いますが、距離が離れるほどその影響も小さくなりますし、力を伝えるには時間がかかります(光の速度で伝わります)。要するに物理学では「遠い所にあるもの同士は互いにほとんど影響し合わない、しても時間差が生じる」という常識があったということです。また、たとえば地球から無人惑星探査機に情報を光(電磁波)で送ってコンピューターを操作しようと思っても、やはり光速という限界があるため、それが遠くにあるほど大きな時間差が生じてしまうのです。
近くても遠くても、互いにもつれあっています
さて本題に入りましょう。エンタングルメント(entanglement)は実に不可思議な現象なんです。粒子のペア A, B を考えます。このペアは互いに影響を与え合います。ある種の粒子(電子など)にはスピンとよばれる回転する量があって、奇妙な響きではありますけど、回転方向によって「上向き」「下向き」と名づけられています。
仮に粒子 A を観測して「上向き」だとわかれば、粒子 B は自動的に「下向き」と決まります。もちろん、これは先ほどの常識に照らせば、「互いに近距離にある場合に限っての話」となるはずですが、量子力学を使って計算すると …
「いや、距離は関係ないよ。粒子 A を地球に置いておいたとして、粒子 B が月に行こうが、火星に行こうが、はたまた銀河の果てに飛ばされようと互いの影響関係は保持されたままなんだ」
という、おかしな結論が導かれてしまいます。つまり地球で粒子 A を観測して「上向き」だとわかれば、銀河の果てに漂う粒子 B はその瞬間に(時間差ゼロで)「下向き」と決まってしまいます。常識で考えると「???」と大混乱してしまいますね。
まあともかく、自然界はそうなっていたので、人間は黙って謙虚に受け入れるしかないのです。別に人間が自然界を作ったのではないですから、自然界の法則が人間の常識とかけ離れていても仕方ない。そう考えるしかないでしょう。「奇妙でも理解できなくても、せっかく見つけた現象だし、このさいだから何かに有効利用してやろう」と考えるのがまた人間のしぶとさでもあります。
AIにエンタングルメントについて説明してもらいました
[ChatGPT] エンタングルメントは、量子力学の原理に基づく不思議な現象で、2つ以上の粒子が特別な状態にあるとき、片方の粒子の状態がわかると、もう一方の粒子の状態も同時に分かるという性質です。量子力学では、粒子の状態は「状態ベクトル」と呼ばれる数学的な対象で表現されます。エンタングルメントが起こると、複数の粒子の状態ベクトルが絡み合い、それらの粒子はお互いに依存し合います。
例えば、2つのエンタングルした粒子AとBがあり、それぞれが「スピン」と呼ばれる性質を持っているとします。スピンは、粒子が持つ角運動量の一種で、上向きや下向きの2つの状態があります。エンタングルされた状態では、粒子Aが上向きのスピンを持っていると、粒子Bは同時に下向きのスピンを持っていることが確定します。そして、粒子Aが測定されて上向きだとわかる瞬間、粒子Bも遠く離れた場所でも即座に下向きのスピンとなるのです。
この関係は非常に奇妙で、通常の直感や日常の経験とは異なります。エンタングルメントが物理法則として確立されたのは20世紀初頭であり、当初は非常に驚くべきアイディアでした。しかし、これは実際の実験で確かめられた現象であり、量子物理学の基本原理の一部として理解されています。
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