"Measure & Measure" 6回目です。
前回記事では2つの物体の間にはたらく引力が
\[F=G\frac{m_1m_2}{r^2}\:[\mathrm{N}]\]
という式で表され、地球上の物体にはたらく重力は質量を 10 倍すれば概算できることをお話しました。ちなみに東京スカイツリーの質量(地上本体鉄骨重量)は約 40000 トンなので、約 4 × 107 N (4000万ニュートン) の重力がはたらいています。
この値を頭の片隅に置いて 地球と月が互いに引き合う力 がどれくらいの大きさなのか実感してみましょう。
[NASA 提供]
地球と月が引き合う力
万有引力は物体の質量に比例して大きくなりますが、距離の 2 乗に逆比例しますから、物体同士の距離が離れると、その力はどんどん弱くなっていきます。月は楕円軌道で地球のまわりを周回していますが、その平均距離は
\[r_{em}=3.844\times 10^8\:[\mathrm{m}]\]
です。2 乗すると概算で 1017 のオーダーです。地球と月の質量はそれぞれ
\[M_e=5.974\times 10^{24}\:[\mathrm{kg}],\quad M_m=3.844\times 10^{22}\:[\mathrm{kg}]\]
です。両者を掛け合わせると概算で 1047 ぐらいです。これに万有引力定数
\[G=6.672\times 10^{-11}\:[\mathrm{m^3kg^{-1}s^{-2}}]\]
をかけると、分子はおおよそ 1037 となりますから、分母(距離の 2 乗)よりもずっと大きな桁であることがわかります。概算では 1020 N ほどの力がはたらくことになりますね。きちんと計算すると
\[F=1.982\times 10^{20}\:[\mathrm{N}]\]
となります。スカイツリーにはたらく重力 4 × 107 N と比較すると、その力の強さがわかります。これほどの巨大な力を受けながら月が地球に落下してこないのは、月が地球を巡るときに発生する遠心力と釣り合っているからなのです。
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地球と太陽が引き合う力
今度は地球が太陽から受ける引力を計算してみます。
地球と太陽の間の平均距離は
\[r_{es}=1.496\times 10^{11}\:[\mathrm{m}]\]
およそ 1 億 5 千万 km です。太陽の質量は
\[M_s=1.989\times 10^{30}\:[\mathrm{kg}]\]
であり、地球の質量
\[M_e=5.974\times 10^{24}\:[\mathrm{kg}]\]
の約 30 万倍という途方もない質量です。これらの数値と万有引力定数
\[G=6.672\times 10^{-11}\:[\mathrm{m^3kg^{-1}s^{-2}}]\]
を使って
\[F=G\frac{M_sM_e}{r_{es}^2}\:[\mathrm{N}]\]
によって地球と太陽の間にはたらく引力を計算すると
\[F=3.542\times 10^{22}\:[\mathrm{N}]\]
という値になります。これは月と地球の間にはたらく力より 2 桁も大きな値となっています。 ≫ Measure & Measure!