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全速力で走っている人間の運動エネルギー

新企画『メジャー&メジャー』の2回目です。前回は位置エネルギー についてお話しました。今回は運動エネルギーです。

運動エネルギーとは?

質量が大きければ大きいほど、そして速ければ速いほど、物体のもつエネルギーは大きくなります。これが運動エネルギーです。数式で書くと
 \[K=\frac{1}{2}mv^2\]
$m$ は質量を表し、単位はキログラム (kg) です。
$v$ は速度を表し、単位はメートル毎秒 (m/s) です。ざっくり書くと
 \[運動エネルギー=質量\times 速度\times 速度\div 2\]
となります。まあとにかく重くて速いものはエネルギーが大きいのです。それでは具体的に運動エネルギーを計算してみましょう。前回にお話した「英語辞書を持ち上げたときのエネルギーは 10 ジュール」ということを基準にすると、エネルギーの大きさを実感しやすいですよ。

ウサイン・ボルト選手の運動エネルギー

9 秒 58。これは 2009 年の世界陸上ベルリン大会で、短距離走者のウサイン・ボルト選手が 100 m 走で出した驚異的な世界記録です。つまり歴史上人類が出した最高速度ということですね。では、この記録を運動エネルギーという観点から見ると、いったいどれぐらいになるのか計算してみましょう。このとき計測された最高速度 12.27 m/s の端数を落として 12 m/s を速度 $v$ とします。また質量 $m$ は、ボルト選手の公式プロフィールに載っている体重 94 kg を用います。電卓で計算してみると …
 \[K=\frac{1}{2}\times 94\times 12^2=6768\,\mathrm{J}\]
およそ 6800 ジュールです。英語辞書がもっていた位置エネルギーの約 680 倍です。やはりすごいエネルギーですね。特にボルト選手は他の選手に比べて体重が重いので、同じ速度を出すにも、それだけ大きなエネルギーを生み出さなくてはいけないのです。たとえば体重 70 kg の選手がこの速度で走るのに必要な運動エネルギーは
 \[K=\frac{1}{2}\times 70\times 12^2=5040\,\mathrm{J}\]
となります。エネルギー差にすると約 1700 ジュールもあることになります。身体が大きくなれば筋力が増えて馬力は増えますが、体重増加ぶんだけより大きなエネルギーを要求されるので、その兼ね合いが難しいところですね。でもボルト選手が世界記録を出したということは、大きいほうが有利ということなのかもしれません。いずれにしても、走っている人間のエネルギーは数千ジュールであることは新しい目安となります。

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