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上に有界な単調増加数列は収束します

数列の有界性

すべての $n$ について $a_n \leq c$ となる実数 $c$ が存在するとき、数列 $\{a_n\}$ は上に有界であるといいます。また $c$ を上界(upper bound)といいます。すべての $n$ について $b \leq a_n$ となる実数 $b$ が存在するとき、数列 $\{a_n\}$ は 下に有界 であるといいます。また $b$ を下界(lower bound)といいます。数列 $\{a_n\}$ が上に有界であり、なおかつ下に有界であるとき、つまりすべての $n$ について $b \leq a_n \leq c$ が成り立っているとき、数列 $\{a_n\}$ は有界であるといいます。

数の集合 $A$ について上界の中で最小のものを 上限(supremum)とよんで $\mathrm{sup}A$ と表します。また下界の中で最大のものを下限(infimum)とよんで $\mathrm{inf}A$ と表します。集合 $A$ が数列 $\{a_n\}$ であるときは上限を $\mathrm{sup} \{a_n|n \in \mathbb{N}\}$ のように書くこともあります。

有界数列の例として、$a_n=1-1/n$ で表される数列を考えてみます。この数列は下の図にあるように $0 \leq a_n \lt 1$ の範囲に存在しています。
 
上界と下界、上限と下限

つまりこの数列は有界であり、0 以下の実数はすべて下界となります(青い部分)。そのなかの最大値が 0 であり、これが下限です。また 1 以上の実数はすべて上界です(緑の部分)。1 より僅かでも小さな値 $1-\varepsilon$ は上界になりえません。なぜなら $n \rightarrow \infty$ で $\{a_n\}$ は $1-\varepsilon$ を追い越していくらでも 1 に近づくことができるからです。上界の最小値は 1 であり、これが上限となります。

実数の連続性

上限と下限について、以下のような実数の連続性の公理が与えられています。

実数の集合 $\mathbb{N}$ において、上に有界な任意の部分集合をとるとき、$A$ の上限 $\mathrm{sup}A$ が $\mathbb{N}$ の中に存在する。また下に有界な任意の部分集合をとるとき、$A$ の下限 $\mathrm{inf}A$ が $\mathbb{N}$ の中に存在する。

公理の内容を図で示すと次のようになります。
 
Excel実数の連続性公理

(上にも下にも)有界な部分集合 $A$ をとると、公理は $\mathrm{sup}A$ と $\mathrm{inf}A$ が存在することを示しています。

単調増加数列と単調減少数列は収束します

任意の $n$ について $a_n \leq a_{n+1}$ が成り立つ数列 $\{a_n\}$ を単調増加数列とよび、上に有界な単調増加数列は必ず収束します。

上に有界な単調増加数列 $\{a_n\}$ は収束し、その極限値は
\[\lim_{n\rightarrow \infty}a_n=\mathrm{sup}\{a_n|n \in \mathbb{N}\}\]で与えられる。また下に有界な単調減少数列 $\{b_n\}$ は収束し、その極限値は
\[\lim_{n\rightarrow \infty}b_n=\mathrm{inf} \{b_n|n \in \mathbb{N}\}\]で与えられる。

【$a_n=1-1/n$ が収束することの証明】
いきなり定理の一般的な証明にかかるとイメージしにくいので、まず先ほど例にあげた単調増加数列 $a_n=1-1/n$ が収束することを証明してみます。図も再掲しておきます。
 
上界と下界、上限と下限

$A=\{a_n|n \in \mathbb{N}\}$ とおきます。上限 $\mathrm{sup}A$ が存在して、その値は 1 です。つまりすべての $n$ について $a_n \lt 1$ が成り立ちます。上限 $\mathrm{sup}A$ は上界の最小値ですから、どのような $1-\varepsilon$ も $A$ の上界とはなりえません。つまり $1-\varepsilon \lt a_k$ となる $k$ が存在して、$n \gt k$ のとき
 \[1-\varepsilon \lt a_k \leq a_n \lt 1\]
を満たしています。これが任意の $\varepsilon$ について成り立っているわけですから、$a_n$ は 1 に収束します。

【単調増加数列が収束することの証明】
同じように全ての単調増加数列が収束することを証明します。
$A=\{a_n|n \in \mathbb{R}\}$ とおきます。上限 $u=\mathrm{sup}A$ が存在します。つまりすべての $n$ について $a_n \leq u$ が成り立ちます。上限 $u$ は上界の最小値なので、どのような $u-\varepsilon$ も $A$ の上界ではありません。すなわち $u-\varepsilon \lt a_k$ となる $k$ が存在して、$n \gt k$ のとき
 \[u-\varepsilon \lt a_k \leq a_n \leq u\]
を満たしています。これが任意の $\varepsilon$ について成り立つので $a_n$ は $u$ に収束します。

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