共通約数をもつ数字の線形結合
たとえば共通の約数を 2 をもつ 6 と 12 を考えます。数論の記号を使うと 2|6 , 2|12 です。これを足し合わせると
と書けるので、18 もまた 2 を約数にもちます。今度は 6 と 12 にそれぞれ適当な整数を掛けて加えてみます(これを 線形結合 とよびます)。たとえば係数として 11 と 5 を選ぶと
と書けるので、126 もやはり 2 を約数にもちます。以上のことを一般化すると次の定理が成り立ちます。
[証明]
となるので、
定理A3 は次のように拡張できます。
定理A3 と定理A4 を数学記号を用いて簡略して書いてみます。
整数全体の集合は
【定理A4】
このように記号だけ並べてしまうと、慣れないうちは難しく感じるかもしれませんが、そもそも記号は物事を楽に考えるために(なるべく脳を休ませるために)使うのであって、いったん慣れてしまえば、こちらのほうがずっと楽に思えてきます。
c|b,b|aならばc|a
たとえば 3 を約数にもつ 9 と、9 を約数にもつ 27 について、27 が 3 を約数にもつことはほぼ自明のことですが、これを定理として書くと次のようになります。
最小公倍数の定義と使用する記号についてまとめておきます。
たとえば 8 と 12 の公倍数は
であり、この中の最小のものは 24 なので、
のように表します。
たとえば、8 と 12 の公倍数 24, 48, 72, 96 … はいずれも最小公倍数 24 で割り切れます。これは最小公倍数に関する最も基本的な性質であり、一般的に書くと次のようになります。
[証明] 除算アルゴリズムによって
となるような整数
であることが示されました。(証明終)
最大公約数の定義と記号、いくつかの定理をまとめておきます。
たとえば 12 と 30 の公約数は
であり、この中の最大のものは 6 なので、
と表します。
[証明]
すなわち
たとえば 8 は 2 を約数にもちますが、2 と 8 の最小公倍数は 8 です。言われてみれば当たり前のことなのですが、この同値関係を使うだけで証明が上手くいく場合があるのです。
[証明] 定理 A7 より、最小公倍数
なので
が成り立ちます。同様に
も成り立ちます。つまり
です。一方で
も成り立っています。つまり
であり、
であること、すなわち
であることが示されました。(証明終)
以上の事実は具体的な数字で確認すると、ほとんど自明のことです。
たとえば 12 と 30 の公約数を並べると
となりますが、最大公約数 6 は 1, 2, 3 のいずれでも割り切れます。
最大公約数と互いに素である数
たとえば 10 と 15 の最大公約数
ですが、10 と 15 はそれぞれ
と表せます。このとき 2 と 3 は互いに素な関係にあります:
このことを一般的に書くと次のような定理になります。
[証明]
のように表すことができます。すなわち
となります。つまり
2 整数の積はGCDとLCMの積に等しい
10 と 15 の最大公約数
となります。このとき最大公約数と最小公倍数の積
[証明]
とおくと、定理A9 より
ここで
のように書くことができるので、
となります。そこで
とおくと (1) より
また
と表せます。これを (3) に代入すると
すなわち
よって
すなわち (2) より
両辺に
すなわち
であることが示されました。(証明終)
a,bが素かつbcがaで割り切れるなら、cはaで割り切れる
3 と 5 は互いに素の関係にあります。
ここで 3 で割り切れるように 5 に適当な数をかけます。
たとえば 6 をかけてみると
すると 5 は 3 で割れないのですから、 6 が 3 で割り切れることがわかります。
当たり前といえば当たり前のことですが、これも定理として載せておきます。
[証明] 2 整数の積は最大公約数と最小公倍数の積に等しいので、
が成り立ちます。
したがって
3 整数の最大公約数
たとえば 16, 24, 28 の 3 整数について、16 と 24 の最大公約数は
であり、8 と 28 の最大公約数は
となって、これが 3 整数の最大公約数となっていることは、それぞれの数を素因数分解してみれば、ほぼ自明のことだといえます:
ただし本講座ではまだ素因数分解を定義していないので、これはちょっと反則ですね。後述の一般定理はもちろん素因数分解なしで証明します。ようするに 3 整数の間には
が成り立っています。これを一般的に書いたのが次の定理A13 です。
[証明] 当たり前のことですが、
が成り立ちます。すなわち
さらに
も成り立っているので、
また、次のような関係が成り立つことも明らかです:
すなわち
(1) と (2) より、
が成り立つことが示されました。(証明終)
この定理から直ちに次の定理A14 が導き出されます。
[証明]
となり、定理A14 が証明されました。(証明終)
この定理は 3 数のうちいずれか 2 つが互いに素 であれば使えます(もちろん 3 数全てが互いに素であっても成り立つことは言うまでもありません)。たとえば 5, 7, 10 という組を考えると、5 と 7, 7 と 10 は互いに素ですが、5 と 10 は互いに素ではありません。しかし定理A14 より(わざわざ定理を持ち出さなくても、ひと目でわかりますが)、3 数の最大公約数は 1 です。
3整数の最小公倍数
3 整数 4, 6, 10 の最小公倍数は
と計算することができます。これもほぼ自明のことだと思われるかもしれませんが、以下で証明しておきます。
[証明]
さらに
また、次の関係が成り立つことは明らかです。
すなわち
が成立します。(3), (4) より
となることが示されました。(証明終)
定理A15 から次の定理A16 が導き出されます。
[証明] 定理A15 を用いると
となります。(証明終)
定理A14 と対をなす定理ですが、こちらは どの 2 数をとっても互いに素 でなくてはなりません。たとえば 2, 3, 5 という数の組を考えると、2 と 3, 3 と 5, 2 と 5 はどれも互いに素の関係にあるので、その最小公倍数は
と計算できます。
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