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色々な因数分解の方法

これまでは x2=c2 という簡単な二次方程式を扱ってきました。
ここで c を左辺に移項して、
(1)x2c2=0と変形してみます。展開公式
(a+b)(ab)=a2b2と見比べてみると (1) は
(2)(x+c)(xc)=0と書くことができますね。つまり
xc=0x+c=0であれば、方程式を満たすということです。これから x=±c という解を導くことができます。x2=c2 のような簡単な場合にわざわざこんなことをする必要はありませんが、もっと複雑な二次方程式を解くときに、左辺を因数分解して x を求めるという方法を用います。

因数分解とは?

以前に自然数を素因数分解する方法を学びましたね。たとえば 18=233 のように、それ以上細かくは分解できない素数の積で表すことです。因数分解 とは、素因数分解の整式バージョンで、n 次多項式 をより次数の低い整式の積で表すことをいいます。素因数分解のことも単に因数分解とよぶこともあるのですが、それだと紛らわしいので、学校の教科書などでは、因数分解といえば整式の分解であるとして素因数分解と区別しています。

展開公式を逆向きに使います

二次式の因数分解には以前に学んだ展開公式を用います。
 (a+b)(ab)=a2b2(a+b)2=a2+2ab+b2(ab)2=a22ab+b2(a+b)(a+c)=a2+a(b+c)+cd
方程式では x という文字を使うことが一般的なので、文字を置き換えた形で書き並べておきます。
 (x+a)(xa)=x2a2(x+a)2=x2+2ax+a2(xa)2=x22ax+a2(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
上の 4 つの公式に加えて
 (ax+b)(cx+d)=acx2+(b+d)x+bd
という展開式もよく使われます。いずれにしても左辺から右辺への展開は難しくありませんが、右辺から左辺に素早く変形できるようになるためには、それなりの練習が必要となります。残念ながら、因数分解に関してはあまり特効薬のようなものはありません。もちろん、いくつか計算を楽にするテクニックはありますので、パターン別に分けた練習をします。

x^2-a^2=(x+a)(x-a)の因数分解

最初に x2a2=(x+a)(xa) という形の因数分解の練習をします。やさしいように思えますが、少し込み入った形になると、それなりに練習を積んでおかないと素早く答えを出せません。

aが整数の場合

まずは a が整数、つまり a2 が平方数になっている例を見ていきましょう。
 x29=(x+3)(x3)x225=(x+5)(x5)x2256=(x+16)(x16)
講座を始めたばかりの頃にも言いましたけど、
 122=144,132=169,142=196
など、ある程度の数の平方数を覚えておかないと、素早く因数分解できないことがありますので、普段から隙間時間に頭の中で「172 は … 」と練習しておいてください。

aが分数の場合

次は a が分数となっているケースです。a2 は分子・分母ともに平方数となっています。
 x249=(x+23)(x23)x22516=(x+54)(x54) 

aが無理数の場合

a2 が平方数とならない場合は無理数を使って因数分解します。
 x23=(x+3)(x3)x211=(x+11)(x11)x28=(x+22)(x22) 

x^2の前に係数がある場合

a2x2b2=(ax+b)(axb) と分解するケースです。
 4x21=(2x+1)(2x1)25x29=(5x+3)(5x3)12x216=(23x+4)(23x4)

因数分解の練習問題①

次の式を因数分解してください。
(1) 16x26  (2) 5x228  (3) (3+22)x24
 
【解答】
(1) 16x26=(4x+6)(4x6)
 
(2) 5x228=(5x+27)(5x27)
 
(3) これは少し厄介な問題で、3+22 の平方根をとると二重根号となってしまいます。そこで以前に学んだ方法で 2 重根号を外しておきます。公式
a+b+2ab=a+bを使うと、
3+22=1+2となって、
(3+22)x24=[(1+2)x+2][(1+2)x2]と因数分解することができます。

x^2+2ax+a^2=(x+a)^2の因数分解

今度は
x2+2ax+a2=(x+a)2という形の分解を練習します。 

a^2が整数の場合

展開公式の復習も兼ねて、a=3 として右辺から左辺の計算過程を追ってみます。
 (x+3)2=x2+23x+32=x2+6x+9
1行目から2行目の過程で
 2×3=6,32=9
という計算を行っています。つまり末尾の数に着目して 2 乗して 9 になる数(つまり 9 の平方根)は 3 で、その 2 倍の数である 6 が x の係数と一致していることを確認できたら、この式は因数分解できるということになります。改めて書くと
 x2+6x+9=(x+3)2
となります。それでは例題を解いてみましょう。
 x2+2x+1
これは迷うこともないはずです。
1=1212 倍すると 2 になるので a=1 と決まって
 x2+2x+1=(x+1)2
と因数分解できます。次はもう少し難しい問題です。
 x2+14x+49
49 の平方根は 772 倍は 14 となっているので、この式は因数分解できることがわかって、
 x2+14x+49=(x+7)2
と書くことができます。

a^2が分数の場合

a2 が分数であっても、その平方根 a が有理数であれば、有理数の範囲で因数分解することができます。例として
 x2+x+14
という式を考えてみます。1/4 の平方根は有理数 1/2 であり、その 2 倍は 1 となっています。よって
 x2+x+14=(x+14)2
と因数分解できます。

因数分解の練習問題②

次の式を因数分解してください。
(1) x2+10x+25
(2) x2+12x+36
(3) x2+16x+64
(4) x2+18x+81
(5) x2+13x+169
(6) x2+23x+19

【解答】
(1) x2+10x+25=(x+5)2
(2) x2+12x+36=(x+6)2
(3) x2+16x+64=(x+8)2
(4) x2+18x+81=(x+9)2
(5) x2+13x+169=(x+13)2
(6) x2+23x+19=(x+13)2

xに係数が掛かっている場合

次のような式を因数分解することを考えてみましょう。
 4x2+4x+1
x2 に係数がついてます。こういう場合は 4x2 の平方根をとって、
 4x2+4x+1=(2x)2+2(2x)+1
というように 2x をひとまとめにします。1=12 で、2x の係数は 12 倍となっているので、
 4x2+4x+1=(2x)2+2(2x)+1=(2x+1)2
と因数分解できます。

xの係数に無理数が含まれている場合

x の係数に無理数が掛かっているような形であっても因数分解できることがあります。たとえば
 x2+22x+2
という式を考えると、定数項 2 の平方根は 2x の係数はその 2 倍となっているので、
 x2+22x+2=(x+2)2
と因数分解することができます。

a^2+b^2+c^2の因数分解

もう少し難しい問題に挑戦してみましょう。
 a2+b2+c2+2ab+2bc+2ac
文字の種類が 3 つもあって「本当に因数分解できるの?」と思ってしまいますけど、ここは落ち着いて、a2+2ab+b2=(a+b)2 の公式を思い浮かべて、
 a2+b2+c2+2ab+2bc+2ac=(a+b)2+2c(a+b)+c2
と整理してみます。この式を (a+b) の次式と二次式とみるのです。定数項 c2 の平方根は c で、(a+b) の係数はその 2 倍の 2c となっているので、
 a2+b2+c2+2ab+2bc+2ac=(a+b+c)2
ときれいに因数分解することができました。これはそのまま公式として覚えておいても役に立ちます。

因数分解の練習問題③

次の式を因数分解してください
(1) 9x2+30x+25
(2) 4x2+2x+14
(3) x2+25x+5
(4) x2+43x+12
(5) 2x2+22x+1
(6) a2+b2c2d2+2ab2cd
 
【解答】
(1) 9x2+30x+25=(3x)2+10(3x)+25=(3x+5)2
(2) 4x2+2x+14=(2x)2+(2x)+14=(2x+14)2
(3) x2+25x+5=(x+5)2
(4) x2+43x+12=(x+23)2
(5) 2x2+22x+1=(2x+1)2
(6) 二段階で因数分解する必要があります。以前に学んだ a2b2=(a+b)(ab) の公式も合わせて用います。
a2+b2c2d2+2ab2cd=a2+2ab+b2(c2+2cd+d2)=(a+b)2(c+d)2=(a+b+c+d)(a+bcd)

x^2+(a+b)x+abの因数分解

a=2,b=3 として右辺から左辺の計算過程を追ってみます。
 (x+2)(x+3)=x2+(2+3)x+2×3=x2+5x+6
1行目から2行目の過程で
 2+3=5,2×3=6
という計算を行っていますね。23 を足した数が x の係数、掛けた数が定数項となっています。因数分解はこの逆をたどるので
 52+362×3
というような分解操作を行ないます。敢えて式を書くなら
 a+b=5,ab=6
という連立方程式を解いて a,b を求めていることになります。これを踏まえて次の二次式の因数分解に挑戦してみましょう。
 x2+10x+24
基本的に、積の分解から目をつけます。
 24=2×1224=3×824=4×6
のように分解できるので、この中から足して 10 になる 46 に決まります。実際にはこのサーチを数秒でできるように、たくさんの訓練を積まなくてはいけません(算数における九九や筆算のトレーニングと同じです)。次は定数項が負になっているケースです。
 x2+x2
2 を整数同士の積に分解するのは
 2=1×(2)2=(1)×2
の2通りだけです。足して 1 になるのは 124 の組合せなので、
 x2+x2=(x1)(x+2)
と因数分解できます。最後に例題をもう1つ。
 x2+6x27
を因数分解してみましょう。こういう場合はとりあえず符号は無視して 27
 27=3×9
と分解して書いてみて、どちらを負にしたら足して +6 になるかを考えます。この場合は 3 を負にすれば 93=6 となるので、
 x2+6x27=(x3)(x+9)
となります。

因数分解の練習問題④

次の式を因数分解してください
(1) x2+12x+35
(2) x2+12x+48
(3) x2+13x+22
(4) x2+x42
(5) x214x42
 
【解答】
(1) x2+12x+35=(x+5)(x+7)
(2) x2+12x+48=(x+4)(x+8)
(3) x2+13x+22=(x+2)(x+11)
(4) x2+x42=(x6)(x+7)
(5) x214x42=(x5)(x9)

ax^2+(a+b)x+abの因数分解

次のような式を因数分解することを考えます。
 4x2+8x+3
4x2=(2x)2 なので、2x をひとかたまりに見て公式を適用します。
 4x2+8x+3=(2x)2+4(2x)+3
定数項は 3=1×3, (2x) の係数は 4=1+3 ですから
 4x2+8x+3=(2x+1)(2x+3)
のように因数分解できます。

xの係数が無理数である場合

たとえば
 2x2+52x+6
のように x の係数が無理数であっても、2x の二次式と考えることによって
 2x2+52x+6=(2x)2+5(2x)+6=(2x+2)(2x+3)
のように因数分解できます。

[3項]×[3項]の形に因数分解

さらに難しい問題に挑戦してみましょう。
 a2+b2+2ab+4a+4b+3
慣れていないとどこから手をつけていいのかわかりませんが、a2+2ab+b2=(a+b)2 の部分を取り分けて書き直してみます。
 a2+b2+2ab+4a+4b+3=(a+b)2+4(a+b)+3
定数項が 3=1×3(a+b) の係数が 4=1+3 なので、
 a2+b2+2ab+4a+4b+3=(a+b+1)(a+b+3)
と因数分解できます。

因数分解の練習問題⑤

因数分解してください
(1) 9x2+2x8
(2) 25x2+10x3
(3) 7x237x40
(4) 25x4+10x2+16
(5) x4+2x3+9x2+8x+15
 
【解答】
(1) 9x2+2x8=(3x2)(3x+4)
(2) 25x2+10x3=(5x1)(5x+3)
(3) 7x237x40=(7x+5)(7x8)
(4) 25x4+10x2+16=(x2+2)(x2+8)
(5) これは因数分解としてはかなりの難問です。x3 の項をどう処理するかがポイントです。x3 が現れるということは、たとえば
 (x2+)(x2+)
のような式のおいて x の一次の項が含まれているはずです。そこで、x2+x を 2 乗した
 (x2+x)2=x4+2x3+x2
という部分を取り分けて整理していくと
 x4+2x3+9x2+8x+15=(x4+2x3+x)+(8x2+8x+15)=(x2+x)2+8(x2+x)+15=(x2+x+3)(x2+x+5)
のように因数分解できます。

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