フーリエ級数

フーリエ級数

$a\le x\le b$ で定義された正規直交関数系
 $$\{{\varphi }_0,{\varphi }_1,\cdots {\varphi }_n,\cdots \}$$
を用意します。すなわちこの関数列は互いの内積について
 $$\begin{array}{}\text{(A)}& ({\varphi }_m,{\varphi }_n)={\int }_a^b{\varphi }_m(x){\varphi }_n^{\ast }(x)dx={\delta }_{mn}\end{array}$$
という関係を満たしています（* は共役複素数です）。ただし ${\delta }_{mn}$ は $m=n$ のときに 1, $m\ne n$ のときに 0 となることを意味するクロネッカーのデルタ記号です。このとき $a\le x\le b$ で定義された関数 $f(x)$ をもってきて
 $$\begin{array}{}\text{(B)}& f(x)=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}{c}_n{\varphi }_n(x)\end{array}$$
のように展開したとき（必ずしもできるとは限らない）、この展開式を フーリエ級数 といい、係数 $c_n$ を フーリエ係数 とよびます。上式で ${\varphi }_m$ との内積をとると、(A) より
 $$\begin{array}{rl}(f(x),{\varphi }_m(x))& =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}{c}_n({\varphi }_n(x),{\varphi }_m(x))\\ & =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}{c}_n{\int }_a^b{\varphi }_n(x){\varphi }_m^{\ast }(x)dx=c_m\end{array}$$
となります。つまり係数 $c_n$ は $f(x)$ と ${\varphi }_n$ の内積
 $$\begin{array}{}\text{(C)}& c_n=(f(x),{\varphi }_m(x))\end{array}$$
によって与えられます。そして任意の関数 $f(x)$ に対して
 $$f(x)=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}{c}_n{\varphi }_n(x)$$
のように展開できるとき、関数系 $\{{\varphi }_n\}$ は完全（完備）であるといいます。つまり関数系 $\{{\varphi }_n\}$ が完全であるということは、その系の中に任意の関数を展開できるできるだけのメンバーが揃っているかどうかということです。以上まとめると、

この表式が最も一般化されたフーリエ級数の定義です。選んだ関数系が完全であるかどうかという議論は難しいので、ここでは深入りしませんが、条件自体は簡単で
 $$\begin{array}{}\text{(D)}& \sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}{\varphi }_n(x){\varphi }_n^{\ast }(y)=\delta (x-y)\end{array}$$
が成り立つときに関数系 $\{{\varphi }_n\}$ は完全となります。

複素フーリエ級数

完全な正規直交関数系には色々なものがありますが、普通は $-\pi \le x\le \pi$ で定義された
 $${\varphi }_n(x)=\frac{e^{inx}}{\sqrt{2\pi }}(n=0,\pm 1,\pm 2,\cdots )$$
という関数系を用います。つまり
 $$\{\cdots ,\frac{e^{-i2x}}{\sqrt{2\pi }},\frac{e^{-ix}}{\sqrt{2\pi }},1,\frac{e^{ix}}{\sqrt{2\pi }},\frac{e^{i2x}}{\sqrt{2\pi }},\cdots \}$$
という系列です。この関数系はもちろん正規直交条件
 $$({\varphi }_m,{\varphi }_n)={\int }_a^b{\varphi }_m(x){\varphi }_n^{\ast }(x)dx={\delta }_{mn}$$
を満たしています（計算して確かめてみてください）。$-\pi \le x\le \pi$ で定義された任意の関数 $f(x)$ は
 $$\begin{array}{rl}f(x)& =\sum _{n=-\mathrm{\infty }}^{\mathrm{\infty }}{d}_n\frac{e^{inx}}{\sqrt{2\pi }}\\ d_n& ={\int }_{-\pi }^{\pi }f(x)\frac{e^{-inx}}{\sqrt{2\pi }}dx\end{array}$$
と展開できます。$1/\sqrt{2\pi }$ が２つあるので、それを係数 $c_n$ のほうにまとめてしまえば、
 $$\begin{array}{}\text{(E)}& f(x)=\sum _{n=-\mathrm{\infty }}^{\mathrm{\infty }}{c}_n{e}^{inx}\end{array}$$$$\begin{array}{}\text{(F)}& c_n=\frac{1}{2\pi }{\int }_{-\pi }^{\pi }f(x)e^{inx}dx\end{array}$$
とすっきりした形で表せます。これが普通によく見かけるフーリエ級数の表式です。

任意周期をもつ関数のフーリエ級数展開

$f(x)$ を $-\pi \le x\le \pi$ に限定してしまうと応用範囲が狭いので、$f(x)$ が一般の周期 $2L$ をもつ関数の場合に書き直してみます。もちろん、このとき $f(x)$ について
 $$f(x+2L)=f(x)$$
が成り立っています。ここで $x=Lt/\pi$ という変数変換をほどこすと、
 $$h(t)=\frac{Lt}{\pi }$$
は周期 $2\pi$ の関数となります。実際に確認してみると
 $$f(\frac{L}{\pi }(t+2\pi ))=f(\frac{Lt}{\pi }+2L)=\frac{Lt}{\pi }$$
確かに周期は $2\pi$ となっています。したがって $h(t)$ は
 $$\begin{array}{rl}h(t)& =\sum _{n=-\mathrm{\infty }}^{\mathrm{\infty }}{c}_n{e}^{int}\\ c_n& =\frac{1}{2\pi }{\int }_{-\pi }^{\pi }f(t)e^{int}dt\end{array}$$
のようにフーリエ級数展開できます。変数を $x=Lt/\pi$ に戻すと
 $$\begin{array}{}\text{(G)}& h(t)=\sum _{n=-\mathrm{\infty }}^{\mathrm{\infty }}{c}_n\exp \left(\frac{in\pi x}{L}\right)\end{array}$$$$\begin{array}{}\text{(H)}& c_n=\frac{1}{2L}{\int }_{-L}^{L}f(x)\exp \left(\frac{-in\pi x}{L}\right)\end{array}$$
という表式が得られます。関数 $f(x)$ が実数であるときは、
 $$c_{-n}=c_n^{\ast }$$
という関係が成り立ちます。つまり実関数のフーリエ係数は $n$ が 0 以上のものを計算すれば、$c_{-n}$ は $c_n$ の複素共役をとればよいことがわかります。