ネットを検索していると、0は偶数なのか奇数なのかという質問をたまに見かけます。それに対する答えははっきりしているのですが、ネット上では色々な噂(?)が飛び交っていて、一部で混乱を引き起こしているようです。ネット上での質問に対して、集合論まで使って厳密に解説してくれる真面目な人もいますが、そんな難解な数学講義を聞かされても「???」とかえって困惑する人も多いのではないでしょうか。というわけで、この記事ではあくまで真面目に、でもあまり難しくなり過ぎないような解答を載せてみようと思いました。
0は偶数です
結論から言うと、0は偶数です。
しかし、そんなふうに断定的に言われても、
「4 は 2 つに分けられるから偶数だし、5 は 2 つで分けると 1 つ余るから奇数だよね。それは感覚的によくわかるけど、何もないものをどうやって分けるの?」
と疑問に思う人もたくさんいるでしょう。
そこで今回は、0は偶数であることの理由をじっくり考えてみます。実はこれは「定義」の問題であって、そもそも偶数や奇数をどのように定義しているかを知ると、さほど難しい話ではありません。まずは偶数と奇数の定義をしっかりと確認しておきましょう。
偶数とは?
ある整数 N が偶数であるとは、任意の整数 a を使って
N = 2 a
という形に書けることです。a = 2 を入れてみると
N = 2・2 = 4
となって、よく知られた偶数になります。a は負であっても 0 であっても構いません。 a = -1 を入れると、
N = 2・(-1) = -2
ですから、-2 も偶数です。そして 0 を入れてみると、
N = 2・0 = 0
となるので、立派に偶数であることがわかります。同じように、N が奇数であるとは
N = 2 a + 1
のように書けることです。0 はどんなに頑張ってもこの形に書けないので、奇数ではないということになります。
そしてここが大切な点なのですが、これは偶数と奇数をこのように定めている「定義」だということです。数学において「定義」とはあくまで「決まり事」なので、別の「定義」の仕方を選んでもよかったのです。たとえば仮に昔の人が「N が偶数であるとは、0 以外の整数 a を使って N = 2 a と書けることである」と決めたなら、0 は偶数の定義から外されます。でも、奇数の中に含めることも難しいので( 2 a + 1 に代わる 0 を含めた簡潔な定義式を見つけることはできそうにないので)、「0は偶数でも奇数でもない数である」ということになるでしょう。しかし、せっかく「任意の a で … 」というように美しくまとまった偶数の定義を「0 以外の a で … 」というように煩雑なものにする必要性は特にありませんし、整数論の剰余類などでも色々な不便が生じます。なので、いくら昔の人が変な決め方をしても、「こんな馬鹿な定義はやめろ!」と多くの数学者のクレームがついて、やはりすぐに修正されたでしょう。
0が偶数であることを感覚的に掴みましょう
このように四角四面な定義によって「0は偶数と決められています」と言われても、しっくりこないかもしれません。でも、実際のところ、0 を偶数と定めておくことは私たちの直感にもぴったりフィットします。1つの例を見るために、0 を除外した整数を並べてみます。
… -4, -3, -2, -1, 1, 2, 3, 4, …
私たちの自然な感覚として「偶数と奇数は交代で現れる」というものがありますね。上の並びで正のところをみると、
1 (奇数), 2(偶数), 3(奇数), 4(偶数), …
と確かに交代で現れています。しかし、1 の左隣を見ると
… -1(奇数), 1(奇数), …
奇数が 2 つ並んでしまっています! 何だかすっきりしませんね。
仮に「 0は奇数!」という無茶な決め方をすると、
… -1(奇数), 0(奇数), 1(奇数), …
奇数が 3 つも並んでしまいます。こんなのは論外。
ということで、やはり 0 を偶数と決めて
… -4, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, 4, …
と並べると、ちゃんと偶数と奇数は交代で現れることになります。
剰余類の観点から0の偶奇性を調べます
整数論には剰余類という概念があります。
何だかとても難しそうな言葉ですが、実はとてもシンプルな概念で、「全ての整数は、ある数で割ったときの余りの数で分類される」というものです。つまり偶数と奇数は 2 で割ったときの余りが 0 になるか 1 になるかでグループ分けします。普通は Class の頭文字 C という文字に余りの 0 と 1 を添えて
C0 = {… -4, -2, 0, 2, 4, …}
C1 = {… -3, -1, 1, 3, …}
というように記述します。全ての数が必ずどちらかに入れられます。そのようにすることで、この剰余類から様々な定理が生み出されるのです。ここではこれ以上立ち入りませんが、興味のある人は、当サイトの 初等整数論講座 で 0 の偶奇性についてじっくり考えてみてください。
計算規則の観点から0の偶奇を調べます
よく知られている計算規則に
偶数 + 偶数 = 偶数
奇数 + 奇数 = 偶数
といったものがありますね。そこで
4 + (-4) = 0
としてみます。0 が偶数でないとすれば、規則が成り立たなくなってしまいます。「計算結果が 0 でない限り」というように注釈を付け加えた規則にすることも可能かもしれませんが、そんな面倒な規則は鬱陶しいだけで何の益にもなりません。
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黎明書房から出版されている「おもしろすぎる算数5分間話〈2〉偶数と奇数他」(平林一栄 著)で「0は偶数か奇数か?」という話題が扱われています。中学入学を迎えた小学生向けに書かれた本ですが、素数や数列、二進数など、かなり高度な内容を扱っています。整数について基本から学んでおきたいという方はぜひご購入ください。
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Excelでも0は偶数です
Excel には数値の偶奇性を調べる ISEVEN 関数と ISODD 関数が用意されています。
ISEVEN 関数に偶数を渡すと TRUE, 奇数を渡すと FALSE が返ります。セルに
=ISEVEN(0)
と入力すると「TRUE」が表示されるので、Excel でも「0は偶数」と定義されていることがわかります。
ISODD 関数に偶数を渡すと FALSE, 奇数を渡すと TRUE が返ります。したがって、セルに
=ISODD(0)
と入力すると「FALSE」となり、この結果からも、0 が奇数ではない、つまり「0は偶数」と定められていることがわかります。
ChatGPTに0は偶数なのか尋ねてみました
最後に、物知りな ChatGPT さんに質問してみることにします。
[Q] 0 は偶数ですか?
[A] はい、0 は偶数です。偶数とは、2 で割り切れる整数のことを指します。0 は 2 で割り切れるため、偶数とみなされます。
[Q] もっと詳しく教えてください。
[A] もちろんです。偶数は 2 で割り切れる整数のことを指します。具体的に言えば、ある整数を 2 で割ったときに余りが 0 になる場合、その整数は偶数です。0 は 2 で割ると余りが 0 になるため、0 は偶数です。なぜなら、0 を 2 で割ると、商は 0 で余りも 0 となります。そのため、0 は 2 で割り切れるため、偶数とみなされます。また、偶数は他の偶数との足し算や引き算においても常に偶数になります。例えば、偶数の 2 に偶数の 4 を足すと、結果は 6 となりますが、これも偶数です。同様に偶数から偶数を引いても結果は偶数となります。要するに、0 は 2 で割り切れるため偶数であり、他の偶数と同じ性質を持ちます。
エクセルや数学に関するコメントをお寄せください
はじめまして。
雑誌を読んでいて、0が奇数か偶数か、とあったもので、確か偶数だったはずと遠い昔の記憶を呼び起こしながら、検索していました。
もう30年も前に中学や高校レベルの数学で偶数奇数を2n、2n+1と習った事を思い出しまして、0が偶数である事の数学的証明の数式もやっと思い出した次第です。以下のような証明式だったかと思いますが。
nを整数とした場合、すべての整数に対し2nとなるものを偶数、2n+1となるものを奇数と定義する。0を奇数とすると
2n+1=0
となる。これを満たすnは-1/2となり整数ではないので0は奇数ではない。
ざっとこんな感じの証明式だったはずでしたが。
サイトによっては、0を2で割っても余りが出ないから0は偶数である、などというとんでもない証明まで出ていて正直目がテンとなりました。0はどんな数字で割ろうと0となる、という事も今や常識ではなくなってしまったようで、またびっくりでした。0を2で割ると答えは0となり、余りがないので偶数である、とこんな証明式まで紹介されていたのですよ。今どきの学校ではひょっとしたら 0÷1=1 とでも教えているのかと思ってしまいました。ここへ来てやっと2×n、2×n+1、というような数式が出て来てホッとした次第です。
中学では0は偶数で奇数でもないと習ったので、テストで偶数と書くと✖︎になります。
なので、そういうことを一言記述していただけるとありがたいです。
正しい答えを書いたのに × にされるなんて納得できませんよね。その先生には、ぜひこのサイトの記事を読むように言ってください。
僕も昔、奇数でも偶数でもない数字として習ったのでどっちを信じていいのか、混乱中ですw …でも確かに、当時の僕も「え?偶数じゃないの??」と思った記憶がありますし、説得力もあるので、取り敢えず0は「偶数」と認識を改めておきます。
未だに議論がある部分なのでしょうか?
ウ-ン「(:3 」┌)┘w
記事にも書いたように、N = 2a が偶数の定義である以上、0 を偶数とする以外にありません。逆にもし 0 が偶数でないように決めるのならば、偶数の定義自体を変えなくてはなりません。これに関して数学の専門家から異論があるという話も聞いたこともないので、堂々と「0 は偶数」と断言していいと思います。
【AI連載小説】数学のリズム、エクセルの旋律(9)
「0は偶数か奇数か?」
ある日のExcel VBAサークルの部室で、メンバーたちは気になるテーマについて議論していました。今回のテーマは、「0は偶数か奇数か?」です。
真琴:さて、今日のテーマは少し変わっているけど、皆さんどう思いますか?0は偶数と言えるのでしょうか?
研伸:まあ、0は2で割り切れるから偶数だろう。でも、こういう基本的な問いかけって案外難しいこともあるよね。
月子:確かに、奇数や偶数は自然数に対しての概念だから、0がどちらに属するかは微妙な問題かもしれませんね。
隆治:でも、普段は0も含めて偶数って言うことが多い気がするけど。
悠太:それは確かに。数学的な定義では偶数になるけど、日常的には0も「偶数」って言うことが多いんじゃないかな。
真琴:ということは、一般的には0も含めて偶数と考えられるってことですね。
(突然、サークルに新しく参加してきた二階堂真理子が発言します。)
月子:あ、真理子もこの話に興味があるんですか?
真理子:はい、この話面白そうだったので。でも、0って偶数でも奇数でもない、っていう意見もあるよね。
研伸:それはどういう意味だい?
真理子:たとえば、偶数って2で割り切れる自然数って定義だから、0は自然数じゃないから偶数や奇数には入らない、って考え方もあるんですよ。
悠太:確かに、数学的に厳密に定義するなら0は偶数や奇数には含まれないっていう立場もあるね。
(メンバーたちは様々な意見を出しながら、数学の定義や日常的な使い方について熱く議論していきました。サークルの部室は数学的な探求心で活気づいていました)