合成関数の微分公式
微分可能な関数 $y=f(z),\:z=g(x)$ があって、合成関数 $y=f(g(x))$ の微分は次のように計算できます。
\[\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{dz}\frac{dz}{dx}=f'(g(x))g'(x) \tag{1}\]
これは 鎖の法則 (chain rule) とよばれ、微積分全体にわたって大きな威力を発揮する公式です。
【合成関数の微分公式の証明】
$x$ の増分 $\Delta x$ に対する $z$ の増分を $\Delta z$, また $z$ の増分 $\Delta z$ に対する $y$ の増分を $\Delta y$ とすると
\[\frac{\Delta y}{\Delta x}=\frac{\Delta y}{\Delta z}\frac{\Delta z}{\Delta x}\]
のように書くことができます。$z=g(x)$ は微分可能なので連続です。すなわち $\Delta x \rightarrow 0$ のとき $\Delta z \rightarrow 0$ となるので、
\[\begin{align*}\frac{dy}{dx}&=\lim_{\Delta x\rightarrow \infty}\frac{\Delta y}{\Delta x}\\[6pt]&=\lim_{\Delta z \rightarrow \infty}\frac{\Delta y}{\Delta z}\lim_{\Delta x \rightarrow \infty}\frac{\Delta z}{\Delta x}=\frac{dy}{dz}\frac{dz}{dx}\end{align*}\]
が導かれます。いくつか計算例を見てみましょう。
$y=(ax^2+bx+c)^3$ を微分してみます。$z=ax^2+bx+c$ とおくと $y=z^3$ なので
\[\begin{align*}y’&=\frac{dy}{dz}\frac{dz}{dx}=3z^2(ax+b)\\[6pt]&=3(ax+b)(ax^2+bx+c)^2\end{align*}\]
となります。$y=\sqrt{x^2+1}$ を微分します。$z=x^2+1$ とおくと $y=\sqrt{z}$ なので
\[y’=\frac{dy}{dz}\frac{dz}{dx}=\frac{x}{\sqrt{z}}=\frac{x}{\sqrt{x^2+1}}\]
となります。
逆関数の微分公式
一価単調連続関数 $f(x)$ の逆関数 $y=f^{-1}(x)$ が存在するとき、その微分は
\[\frac{dy}{dx}=\frac{1}{dx/dy} \tag{2}\]
によって計算できます。
【逆関数の微分公式の証明】
合成関数の微分公式 (1) を用いて (2) を証明することができます。
$y=f^{-1}(x)$ は $x=f(y)$ と書き直せるので両辺を $x$ で微分すると
\[1=\frac{df(y)}{dx}=\frac{df(y)}{dy}\frac{dy}{dx}\]
ここで $f(y)=x$ なので
\[1=\frac{dx}{dy}\frac{dy}{dx}\]
となります。すなわち
\[\frac{dy}{dx}=\frac{1}{dx/dy}\]
となります。例として、$y=\sqrt[n]{x}$ を微分してみます。
\[x=y^n\]
のように書き直せるので、公式 (2) より
\[\begin{align*}\frac{dy}{dx}&=\frac{1}{dx/dy}=\frac{1}{ny^{n-1}}\\[6pt]&=\frac{1}{nx^{(n-1)/n}}=\frac{1}{n}\,x^{(1-n)/n}=\frac{1}{n}\,x^{\frac{1}{n}-1}\end{align*}\]
というよく知られた公式が得られます。この微分計算は証明過程で行ったように「両辺を微分する」という方法で行うこともできます。$x=y^n$ の両辺を微分すると
\[1=ny^{n-1}y’\]
ここで $y^n=x$ を代入して
\[1=nx^{1-\frac{1}{n}}y’\]
となるので、
\[y’=\frac{1}{n}\,x^{\frac{1}{n}-1}\]
というように同じ結果が得られます。
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