アルキメデスの原理(Archimedean Property)
上に有界な単調増加数列が収束するという定理から次のアルキメデスの原理を導くことができます。
たとえば $a=0.1,\;b=10$ としてみると、$n=200$ をとれば
\[200a= 20 \gt 10\]
となります。もちろん $n$ は $1000$ でも $10000$ でもいいのです。要はそういう $n$ が存在するということです。なんだか当たり前のことを言っているに過ぎないように思えますが、この定理は $n\rightarrow \infty$ としたときに有効にはたらきます。アルキメデスの原理によると、どれほど大きな $b$ に対しても
\[na\gt b\]
が成り立っているのですから、$b$ を無限に大きくすると $na$ もやはり無限大となるはずです。つまりアルキメデスの原理は極限記号を用いて
\[\lim_{n\rightarrow\infty}na=\infty\]
と書き換えることができます。$a=1$ とすると
\[\lim_{n\rightarrow \infty}n=\infty\]
ですね。またアルキメデスの原理によって $n$ の逆数について
\[\frac{1}{n}\lt \frac{1}{b}\]
が任意の $b$ 、つまりどれほど小さな $1/b$ についても成り立っているので、
\[\lim_{n\rightarrow\infty}\frac{1}{n}=0\]
がいえます。
アルキメデスの原理の証明
アルキメデスの原理の証明には背理法を用います。
$a_n=na$ で表される数列 $\{a_n\}$ の上界に $b$ があるとします。
上に有界な数列は上限(上界の最小値) $s=\mathrm{sup} \{a_n|n \in \mathbb{N}\}$ に収束します。つまりすべての自然数について
\[na\leq s\]
が成り立っています。$s$ は正の実数なので $s-a$ は数列 $\{a_n\}$ の上界ではありません。つまり
\[s-a\lt ka\]
となるような自然数 $k$ が存在します。つまり
\[s\lt (k+1)a\]
となり、上限であるはずの $s$ を超える $na$ が存在することになって矛盾します。したがって $b$ は上界ではなく、$na\gt b$ を満たす自然数 $n$ が存在することになります。
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こんにちは。わかりやすい説明のおかげで助かっております。”na≧u”のuが一体何を表していてどこからきたのかがわかりません…!教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
申し訳ありません。こちらのミスです。
この記事がこちらに掲載している「単調増加数列が収束することの証明」を前提に執筆したので、そこで使用された上限 u = supA の記号を使ってしまいました。この記事では上限を u ではなく s で表していますね。同じ記号を使えばよかったのですが、ずいぶん昔に書いた記事なので、どうして異なる記号を使ったのか、よく憶えていません … 。しかも不等号の向きも逆になっていました。na ≧ u ではなく、na ≦ s です。すでに、この記事は修正しておきました。本当に申し訳ありませんでした。
理解しました!ありがとうございます。
講義で扱った証明が分かりづらいものであったので、分かり易い証明を掲載してくださりとても助かっています。
1つ疑問に思ったですが
s=sup{a_n | n∈R} に収束ではなく、
s=sup{a_n | n∈N} ではないのでしょうか。
初学者なもので恐縮ですが、もし私の疑問が間違っていたら、なぜアルキメデスの原理ではnを自然数として定義しているのに、ここでは実数Rに属するのか教えていただきたいです。
コメントありがとうございます。
このサイトを数学の勉強に役立ててもらえると私も嬉しいです。
御指摘の通り、正しくは s=sup{a_n | n∈N} です。
記事は修正させていただきました。
誠に申し訳ありませんでした。