整数の合同と不合同
1 に 7 を加えながら数字を並べてみます。
並べた数字はいずれも 7 で割ると 1 余ります。そこで、これらは同じ種類の数であると考えて
このように
のように書いて、18 と 29 は「 7 を法として不合同である」といいます。一般に整数
と書きます。ここで
のように書くことができます。
となるので、
なので、
となって、
記号を使って手短に書くと次のようになります。
具体例を載せておくので、実際に
同値関係(反射率、対称律、推移律)
今までの数学で用いてきた等号について、次のような関係が成り立つことは暗黙の了解としてきたはずです(普段は意識することもないと思います)。
② 対称律
③ 推移律
ある集合の2元同士の関係 R が上の条件を全て満たせば同値関係(equivalence relation)にあるといいます。もちろん関係の種類によっては ① ~ ③ のいずれかを満たさない場合もあります。たとえば自然数
①
②
③
② の条件を満たさないので、
合同について同値関係が成り立つかどうか調べてみましょう。
結論を先に言えば、整数の合同は同値関係を満たします。
② 対称律
③ 推移律
【① 反射律の証明】
【② 対称律の証明】
【③ 推移律の証明】
ちなみに「合同」と聞けば小学校の時に習った「三角形の合同」を思い浮かべるかたも多いと思いますが、実は「三角形の合同」も同値関係にあります。ぜひ確認してみてください。
剰余類
任意の整数を 7 で割ると、余りは 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6 のいずれかになります。そこで、その余りの数によって整数を 7 つの集合に分けてみます。
それぞれの集合内の要素同士は法 7 のもとで合同です。このように互いに合同な整数の集合を剰余類(residue class)とよびます。
法 7 による剰余類の例を見れば、どの整数も必ずどこかの剰余類に属し、また複数の剰余類に属することはないことは、ほぼ自明であるように思えますが、これについても一般的に証明しておきます。証明には上で絵説明した同値関係を用います。
① どの整数も必ずどこかの剰余類に属します。
② どの整数も複数の剰余類に属することはありません。すなわち
ここで
【定理C1 の証明】
① 反射律
すなわち、どの整数も必ずどこかの剰余類に属します。
②
推移律によって
であるならば
完全剰余系
先ほどの法 7 による剰余類を再掲します。
それぞれの剰余類から 1 つずつ値を取り出して、
という集合を作ってみます。当然のことながら、この集合には 7 で割ったときの余りの相異なる数が過不足なく含まれています。このような集合のことを 完全剰余系 とよびます。別にどのような値をとってきても完全剰余系であることに変わりはないのですが、たとえば
のように選ぶと、法 7 による完全剰余系であることが一目瞭然です。一般的な定義も載せておきます。
合同式の加算と減算
法 7 による剰余類を再掲します。
ここで、たとえば
となっています (
となります。同じように
としたときに、
を取り出してきて足し合わせると必ず同じ剰余類
これは言い換えると
【定理C2 の証明】
(1)
となります。(2) も同じように証明できます。(証明終)
この定理は合同式においても普通の等式と同じように辺々を足し合せてもかまわないということです。具体的な計算例を載せておきます。たとえば法 5 のもとで
という合同式が成り立っているので、両辺を足し合わせて
という合同式も成り立ちます。
合同式の乗算とべき乗
再び法
たとえば
となります。あるいは
となります。これは決して偶然ではなく、
【定理C3 の証明】
となります。(証明終)
加算の時と同じように、乗算においても普通の (“=” で結ばれた) 等式のように、(法
が成立しているので、辺々を掛けると左辺と右辺はそれぞれ
となって合同であることがわかります。
合同式のべき乗
法 7 による剰余類
また、
となって、やはり 2 数は同じ類の元となります。このように、ある剰余類から 2 数を取り出してべき乗すると、それぞれ一緒に同じ類に移ります(合同関係が維持されます)。
ここで
【定理C4 の証明】数学的帰納法を用いて証明します。
が成り立っています。
が成り立つことを仮定すると、定理 C3(合同式の乗算)より
すなわち
が成り立ちます。よって任意の自然数
が成り立ちます。(証明終)
たとえば
本当に成り立っているかどうか気になる場合は、Excel の MOD 関数などで実際に計算させて確認してください。
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