クラメルの公式
クラメルの公式(Cramer’s rule of determinant solution)は連立一次方程式を解くためのとても有用な公式です。スイスの数学者 G.Cramer によって示されたことから、その名がついています。たとえば、ニ元一次連立方程式
\[\begin{align*}ax+by&=e\tag{1}\\cx+dy&=f\tag{2}\end{align*}\]
が与えられたとき、この方程式の一般解は
\[x=\frac{\begin{vmatrix}e&b\\f&d\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}a&b\\c&d\end{vmatrix}}=\frac{ed-bf}{ad-bc},\;\;y=\frac{\begin{vmatrix}a&e\\c&f\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}a&b\\c&d\end{vmatrix}}=\frac{af-ec}{ad-bc}\]
と表されます。二元一次方程式のクラメルの公式は (1) と (2) に適当な係数をかけて引き算すれば簡単に求められますが、その手法は三元以上の場合に応用がききません。ここでは逆行列と行列式を用いた証明を載せておきます。
【クラメルの公式の証明Ⅰ】逆行列を用いる証明法がもっとも一般的です。連立方程式 (1) で
\[A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\]
とおいて、(1) と (2) を行列形式で表します。
\[\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\binom{x}{y}=\binom{e}{f}\]
$ab-cd\neq 0$ のときにただ1つの解の組 $(x,\,y)$ が存在します。両辺に左から逆行列 $A^{-1}$ をかけると、
\[\binom{x}{y}=\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}\binom{e}{f}=\frac{1}{ad-bc}\binom{ed-bf}{af-ec}\]
となるので、
\[x=\frac{\begin{vmatrix}e&b\\f&d\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}a&b\\c&d\end{vmatrix}}=\frac{ed-bf}{ad-bc},\;\;y=\frac{\begin{vmatrix}a&e\\c&f\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}a&b\\c&d\end{vmatrix}}=\frac{af-ec}{ad-bc}\]
が成り立ちます。■
【クラメルの公式の証明Ⅱ】ニ元一次連立方程式
\[\begin{align*}ax+by&=e \tag{1}\\cx+dy&=f\tag{2}\end{align*}\]
において、係数と定数項をベクトル形式で
\[\vec{p}=\binom{a}{c},\;\;\vec{q}=\binom{b}{d},\;\;\vec{r}=\binom{e}{f}\]
のように表すと、
\[x\vec{p}+y\vec{q}=\vec{r}\]
と書くことができます。ここで $\vec{q}$ との行列式を計算すると
\[\begin{align*}&\mathrm{det}(x\vec{p}+y\vec{q},\;\vec{q})=\mathrm{det}(\vec{r},\;\vec{q})\\&\mathrm{det}(x\vec{p},\;\vec{q})+\mathrm{det}(y\vec{q},\;\vec{q})=\mathrm{det}(\vec{r},\;\vec{q})\\&x\mathrm{det}(\vec{p},\;\vec{q})=\mathrm{det}(\vec{r},\;\vec{q})\end{align*}\]
よって、$\mathrm{det}(\vec{p},\;\vec{q})\neq 0$ であれば、すなわち $ad-bc\neq 0$ であるならば、
\[x=\frac{\mathrm{det}(\vec{r},\;\vec{q})}{\mathrm{det}(\vec{p},\;\vec{q})}=\frac{af-ec}{ad-bc}\]
となります。同様に \(\vec{p}\) との行列式を計算すると
\[y=\frac{\mathrm{det}(\vec{p},\;\vec{r})}{\mathrm{det}(\vec{p},\;\vec{q})}=\frac{ed-bf}{ad-bc}\]
が成り立ちます。■
三元一次連立方程式
\[\begin{align*}a_1x+b_1y+c_1z=d_1\\a_2x+b_2y+c_2z=d_2\\a_3x+b_3y+c_3z=d_3\end{align*}\]
のクラメルの公式も、二元一次連立方程式の表式をそのまま拡張した形となります。係数と定数項をベクトルで
\[\vec{a}=\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix},\;\;\vec{b}=\begin{pmatrix}b_1\\b_2\\b_3\end{pmatrix},\;\;\vec{c}=\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix},\;\;\vec{d}=\begin{pmatrix}d_1\\d_2\\d_3\end{pmatrix}\]
と表すと、
\[\begin{align*}x=\mathrm{det}(\vec{d},\;\vec{b},\;\vec{c})/\mathrm{det}(\vec{a},\;\vec{b},\;\vec{c})\\y=\mathrm{det}(\vec{a},\;\vec{d},\;\vec{c})/\mathrm{det}(\vec{a},\;\vec{b},\;\vec{c})\\z=\mathrm{det}(\vec{a},\;\vec{b},\;\vec{d})/\mathrm{det}(\vec{a},\;\vec{b},\;\vec{c})\end{align*}\]
となります。証明は省略しますが、先ほどの行列式を用いる方法がもっとも簡単です。
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