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背理法(帰謬法)による証明問題

ある命題 $P$ が成り立つと仮定して、証明を進めていく過程のどこかで矛盾が生じたとします。一つ一つの論理ステップがすべて正しければ、それは命題 $P$ が間違っていた結論できます。このような証明法を背理法(proof by contradiction)とよびます。あるいはもっと難しい言葉で、帰謬法(reduction to absurdity)とよぶこともあります。【AG01】は背理法を使う代表的な問題です。$1+\sqrt{2}$ が無理数であることを証明します。【AG02】では $a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}=0$ を満たす有理数 $a,\:b,\:c$ は $0$ 以外にありえないことを証明します。

【AG01】1+√2が無理数であることの証明

(1) $n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数であることを証明してください。
(2) $\sqrt{2}$ が無理数であることを証明してください。
(3) $1+\sqrt{2}$ が無理数であることを証明してください。

【ヒント】自然数に無理数を加えて無理数になるのは、直感的には当たり前に思えるかもしれませんが、こういう当たり前なことほど、いざ証明しようとすると手が止まります。無理数の無理数たる所以(?)の証明法を知っておくことは大切なので、代数学問題集の第 1 問に採用しました。(1) は (2) の準備問題で、おまけのようなものです。つまり (2) では (1) で証明したことを使えるような展開に持ち込めばよいのですが、それを知ってもやっぱり (2) は難しいです。(2) が解けたら、(3) は易しい問題です。
 
【解答】(1) そのままでは証明しにくいので、与えられた命題「$n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数である」の対偶をとって、「$n$ が奇数ならば $n^2$ は奇数である」を証明します。これは簡単です。$n=2k+1$ とおくと
 \[n^2=(2k+1)^2=4k(k+1)+1\]
ですから、$n^2$ も奇数となっています。よって、もとの命題も真です。(証明終)

(2) 背理法を使って証明します。つまり $\sqrt{2}$ を有理数だと仮定するのです。有理数であるとは、互いに素である(最大公約数が $1$ である)数 $p,\:q$ によって
 \[\sqrt{2}=\frac{q}{p}\]
の形に書けるということです。両辺を 2 乗して整理すると、
 \[2p^2=q^2\]
なので、$q^2$ は偶数です。すると、(1) で証明したように $q$ もまた偶数となるので $q=2m$ とおくと
 \[p^2=2m^2\]
という式が得られます。したがって、$p$ も偶数ということになります。しかしそうすると、$p$ と $q$ の公約数に $2$ が存在することになり、互いに素であるという仮定に反します。よってこの仮定自体が誤りであり、$\sqrt{2}$ は無理数だということになります。(証明終)

(3) これも背理法で証明します。
 \[1+\sqrt{2}=\alpha\]
とおいて、$\alpha$ が有理数であると仮定します。$1$ を右辺に移項して
 \[\sqrt{2}=\alpha-1\]
とすると、右辺は有理数の差ですから有理数となっているはずです。しかし左辺は (2) で無理数だと示されているのですから、これは明らかに矛盾しています。ゆえに $1+\sqrt{2}$ は無理数です。(証明終)

【AG02】有理数が満たす条件

$a,\:b\:,c$ を有理数とします。
\[a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}=0\]ならば $a = b = c = 0$ でなければならないことを証明してください。
 
【ヒント】まず $a=0$ 、それから $b=0,\:c=0$ と順に証明します。
 【解答】$a=b=0$ から $ab=0$ を連想します。これは $a,\: b$ のどちらか一方が $0$ という意味ですから、与えられた条件とは異なります。しかしともかくも解答の取っ掛かりにはなりそうです。そこで $ab$ を引張り出すべく条件式を
 \[a+b\sqrt{2}=-c\sqrt{3}\tag{1}\]
と書いてみます。両辺を 2 乗して式を変形していきます。
 \[\begin{align*}&a^2+2ab\sqrt{2}b^2=3c^2\tag{2}\\[6pt]&2ab\sqrt{2}=3c^2-2b^2-a^2\tag{3}\end{align*}\]
ここで、$ab\neq 0$ を仮定すると
 \[\sqrt{2}=\frac{3c^2-2b^2-a^2}{ab}\]
となりますが、左辺は無理数、右辺は有理数となって明らかに矛盾しています。なので、すくなくとも $ab= 0$ が成り立つことがわかります。すると (3) から
 \[3c^2-2b^2-a^2=0\tag{4}\]
という式が得られます。今度は条件式を
 \[a+c\sqrt{3}=-b\sqrt{2}\tag{5}\]
と書いて、2 乗して整理すると
 \[2ac\sqrt{3}=2b^2-3c^2-a^2\tag{6}\]
が得られます。やはり、$a c\neq 0$ と仮定すると矛盾しますので、$ac=0$ となって、
 \[2b^2-3c^2-a^2=0\tag{7}\]
という式が得られます。 (4) と (7) を加えると
 \[a^2=0\]
すなわち $a=0$ となります。すると条件式は $b\neq 0$ を仮定すると
 \[\frac{c}{b}=-\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}\]
となりますが、これもまた左辺が無理数、右辺が有理数となって矛盾です。よって $b$ もやはり $0$ ということになり、結局、
 \[a=b=c=0\]
でなければならないことが示されました。(証明終)

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  1. あとりえこばと より:
    ChatGPTに√2が無理数であることを証明してもらいました

    [ChatGPT] √2が無理数であることを証明するには、√2を有理数の形で表すことができないことを示す必要があります。

    証明:√2を有理数の形で表すと仮定します。すなわち、√2 = p/qとします。ただし、pとqは互いに素の整数です。両辺を2乗すると、2 = p^2/q^2となります。両辺にq^2を掛けると、2q^2 = p^2となります。

    ここで、p^2は偶数であるため、p自体も偶数であることが分かります。すなわち、p = 2rとします。ただし、rは整数です。4式に代入すると、2q^2 = (2r)^2となり、2q^2 = 4r^2となります。両辺を2で割ると、q^2 = 2r^2となります。これは、q^2が偶数であることを示しています。すると、q自体も偶数であることが分かります。

    しかし、pとqは互いに素であると仮定していました。したがって、この仮定は誤りであり、√2を有理数の形で表すことはできないことが示されました。以上のように、√2が無理数であることが証明されました。