大学で学ぶ数学は難しい?

大学で学ぶ数学は難しい?

 今回の「よもやま話」は理工学部を目指す高校生の読者さんに向けてのお話です。
「理系だけど、進学後に数学の講義について行けるかどうかちょっと不安。大学で学ぶ数学ってすごく難しいの?
と疑問に思われる方もいるかもしれません。それに対する答えは …
「難しいものもあれば、別にそうでもないものもある」
としか言いようがないのです。大学によっても違うし、教える先生によっても違うだろうし … わあ! ちょっと待った!
「馬鹿馬鹿しい。他所へ行こう」
などと思わずに、もう少しお付き合いください!

 ちなみに以下の話はあくまで数学科以外の話。
 私自身が物理科でしたから、数学科がどういう所かよく知りませんし、そりゃ、全国から数学の得意な人ばかりが集まる場所なのですから「死ぬほど難しいだろう」という適当な予測しかできません。数学科に関する情報は、数学を専攻した人のブログに行くのが一番です。ただし、このページを読み終わってからにしてください(なんちゃって)。
 
「大学の先生は 10 年も同じノートを使って無気力に講義をしている」
「わからない学生を置き去りにして、どんどん講義を進める」
というような風評を耳にすることもありますが、私個人の経験からすると、ほとんどの教授は将来の研究者を育てるという目的意識をもって、非常に熱意溢れる講義をされております。学生に分かりやすいようにと工夫もされております。ただ、熱意はあっても予備校の先生ほど講義が上手いわけではないのもまた事実です。やはり予習など、学生側の準備もそれなりに必要ですし、大学1年の段階で置き去りにされるほど難しい内容の講義はさすがにありません。
 ああでも、そういえば、1人だけ噂通りの先生がいましたけどね。
 よりによって、ただでさえ難解な『線形代数学』の講義を担当していました。しかも「つまらない、わからない」という至極もっともな理由で学生の欠席が多くなると「最近の学生は不真面目だ!」と逆ギレしてましたよ …… いったい、どういう精神構造してるんでしょうね。理解に苦しみます。要するに、そういう変な教授が1人でもいると、それが噂となって世間に広まってしまうのです。他の真面目な先生たちにとって本当に迷惑な話です。

 よく「大学での数学は厳密なので難しい」という噂も聞こえてきたりしますが、それはもちろん教える先生によるのです。
 基礎概念にこだわって厳密な講義をする先生もいれば(主に数学科の教授)、「数学科じゃないんだから、使えりゃいいんだよ、使えりゃ」と割り切った講義を進める先生(主に物理科や情報科学の教授)もいます。

 「使えりゃいい」タイプの講義における学習スタイルは、高校時代の数学と大差ありません。しかも大学のテキストには受験とちがってあまりひねった演習問題もないですから、公式を憶えて、ひたすらに計算練習です。実際のところ、『ベクトル解析』や『微分積分』などは練習量がものをいうので、とにかく膨大な量の計算をやります。単調なので、たまに飽きてくることもあります。

 もし「まず ε-δ 論法を理解しろ! さもなくばそこから一歩も動くな」という(ちょっと迷惑な)信念をもつ教授にあたってしまったら、「つまるところ、連続とは何ぞや?」という哲学的な問題に頭を悩ませ続けることになります。そういう厳密な思考で脳に強い負荷をかけるというのも、人生でそうあることでもないですから、貴重な経験にはなります。

 ただ、私自身の場合は、あまり強い負荷をかけ過ぎると頭が「ぴよぴよ」してしまいますから、ほどほどのところでやめておきました。もともと馬鹿な頭がショートしてもっと馬鹿になったら困るので。

 私個人の見解としては、数学の勉強は「使えりゃいい」でも「厳密であるべき」でもなく、「感覚を掴むこと」が大切だと考えています。そのあたりの哲学(というほど大げさなものではないですが)は、当サイトや姉妹ブログの『数学実験室』で伝えてみたいと思い、日々試行錯誤しております。というわけで、これからもよろしくお願いします。

大学で学ぶ微分積分学・解析学

 微分積分 (解析学) はどの大学でも例外なく必須単位となっているはずです。高校の数Ⅲをそのまま延長した内容になっていて、厳密性にこだわらない講義であるならば、かなりとっつきやすいです。具体的には逆三角関数、偏微分、多重積分、線積分、テイラー展開などを学びます。このあたりは案外スムーズに吸収できます。なにしろ受験が終わったばかりで、理系の人は頭が「数Ⅲ脳」になっていますからね。要領の良い人なら講義に出なくても、独学で十分に学べます。初っ端にやる逆三角関数がちょっと引っかかりやすいかもしれないけど、そのへんは当サイトを活用してください(と宣伝してみたりする)。

大学で学ぶ微分方程式

 大学1年で微積分の基礎を学びましたが、2年ぐらいになると、その中の微分方程式に絞って、さらに深く掘り下げて学びます。2年生で常微分方程式、3年生で偏微分方程式というように講義が分かれているケースもあるかもしれません。いずれにしても微分方程式は自然界を記述する重要な手段ですから、物理学や工学のみならず、生命科学などでも個体数の増加モデルを作るなど、非常に幅広い分野で応用される分野です。常微分方程式に限定すると主に次のようなことを学びます。

 変数分離型、同次型、1階線型、2階線型、相空間 ……

 この科目は微積分と同じように、それほど難しい分野ではありません。ただ方程式の型ごとに解法が細かく分類されているので、それを覚えるのに少し汗をかくことになります。しかし、この微分方程式という分野は解くこと以上に「解について調べる」という姿勢がとても大切です。選んだ初期値や定数などによって解がどのように変化するかを知るために解曲線をグラフに描いて分析したりします。下図はロジスティック方程式の解曲線です。

微分方程式ロジスティック曲線のグラフ
 数値計算などを行う理論系であれば、研究の基本スタイルである

 ・モデル化する
 ・微分方程式を解いてみる
 ・結果を分析する
 ・モデルを修正する

というようなサイクルの基本を学ぶことになります。将来どの分野に進むにしても決して無駄になることはありませんので、ぜひとも選択しておきたい科目の1つです。

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