数論は主に整数を扱いますが、その定理が整数以外の数の重要な性質を明らかにすることもあります。その一例が素因数分解による無理数性の証明です。厳密には素因数分解の一意性が前提となっています。
√2が無理数であることの証明
たとえば $\sqrt{2}$ が無理数であることは次のように証明することができます。
$\sqrt{2}$ が有理数であると仮定して、
\[\sqrt{2}=\frac{a}{b},\quad (a,\:b)=1\]
という既約分数で表せたとします。これを変形して
\[2b^2=a^2,\quad (a,\:b)=1\tag{1}\]
ここで $a,\:b$ を
\[\begin{align*}a&=p_1^{u_1}\,p_2^{u_2}\,\cdots\,p_i^{u_i}\,\cdots\\[6pt]
b&=p_1^{v_1}\,p_2^{v_2}\,\cdots\,p_i^{v_i}\,\cdots\end{align*}\]
というように素因数分解して (1) 式に代入すると
\[2\,p_1^{2v_1}\,p_2^{2v_2}\,\cdots\,=p_1^{2u_1}\,p_2^{2u_2}\,\cdots\]
となります。すると素因数 2 が左辺には奇数個、右辺には偶数個あることになって矛盾してしまいます。よって $\sqrt{2}$ は無理数です。(証明終)
平方数以外のnについて√nが無理数であることの証明
一般的に $n$ が平方数でない場合に $\sqrt{n}$ が無理数であることを証明してみます。
整数 $m$ , 実数 $k$ を用いて
\[n=m^k\]
とおきます。$\sqrt{n}=\sqrt{m^k}$ が有理数であると仮定して、
\[\sqrt{m^k}=\frac{a}{b},\quad (a,\:b)=1\]
と既約分数で表せたとします。これを変形して
\[m^k\,b^2=a^2,\quad (a,\:b)=1\tag{2}\]
ここで $a,\:b,\:m$ を
\[\begin{align*}a&=p_1^{u_1}\,p_2^{u_2}\,\cdots\,p_i^{u_i}\,\cdots\\[6pt]
b&=p_1^{v_1}\,p_2^{v_2}\,\cdots\,p_i^{v_i}\,\cdots\\[6pt]
m&=p_1^{w_1}\,p_2^{w_2}\,\cdots\,p_i^{w_i}\,\cdots\end{align*}\]
というように素因数分解して (2) 式に代入すると
\[p_1^{2v_1+kw_1}\,p_2^{2v_2+kw_2}\,\cdots\,=p_1^{2u_1}\,p_2^{2u_2}\,\cdots\]
となります。両辺が一致するのは $k$ が偶数である場合だけです。すなわち $k=2s$ とおくと
\[n=m^k=m^{2s}\]
となり、$\sqrt{n}$ が有理数となるのは $n$ が平方数である場合に限ります。(証明終)
2の常用対数が無理数であることの証明
次は $\log_{10}2$ が無理数であることを素因数分解を使って証明してみます。
$\log_{10}2$ が有理数であると仮定して
\[\log_{10}2=\frac{a}{b},\quad (a,\:b)=1,\quad a\neq 0\]
というように既約分数の形で書けたとします。すると
\[\begin{align*}2&=10^{a/b}\\[6pt]2^b&=10^a\\[6pt]2^b&=2^a\,5^a\end{align*}\]
というように「右辺にある因数 5 が左辺には存在しない」という矛盾した式が現れます。したがって $\log_{10}2$ は無理数です。(証明終)
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