ガウスの整数

[問題 CX-07] ガウスの整数

 $m,\:n$ を任意の整数として、複素数 $m + ni$ からなる集合を $S$ とします。

\[S=\{m+ni\:|\:m,\:n\:\in \mathbb{Z}\}\] $S$ の元 $a,\: b$ に対して $a = bc$ を満たす $S$ の元 $c$ が存在するとき、$b$ は $a$ の約数であるといいます。 $1$ の約数をすべて求めてください。

問題 CX-07 のヒント

 $m + ni$ を ガウスの整数 とよびます。いわゆる複素数によって拡大定義された整数であり、その約数もまた普通の整数の場合とは異なります。とはいえ本問はごく基本的な内容で、普段の複素数計算で感覚的に知っている $\pm 1$ や $\pm i$ といった数の他に $1$ の約数が存在するのかということを再確認する問題です。

問題 CX-07 の解答

 求める約数を $x + iy$ とおくと
 
\[1=(x+iy)(m+ni)\]
と書くことができます。右辺を展開して整理すると
 
\[1=(mx-ny)+(nx+my)\:i\]
となるので
 
\[\begin{align*}mx-ny=1\\[6pt]
nx+my=0\end{align*}\]
という連立方程式を立てられます。行列を用いて書き直すと
 
\[\begin{pmatrix}x & -y\\y & x\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
m\\ n\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\ 0\end{pmatrix}\]
 x +iy ≠ 0 なので x2 + y2 ≠ 0 、すなわち逆行列が存在して
 
\[\begin{pmatrix}m\\ n\end{pmatrix}
=\frac{1}{x^2+y^2}\:\begin{pmatrix}x&y\\-y&x\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}1\\ 0\end{pmatrix}
=\frac{1}{x^2+y^2}\:\begin{pmatrix}x\\-y\end{pmatrix}\]
 m と n をそれぞれ平方して加えると
 
\[m^2+n^2=\frac{1}{x^2+y^2}\]
となるので、
 
\[(m^2+n^2)(x^2+y^2)=1 \quad \therefore x^2+y^2=1\]
 x と y は整数なので、
 
\[(x,y)=(1,0),\quad (0,1),\quad (-1,0),\quad (0,-1)\]
 つまり 1 の約数は
 
\[\pm 1,\quad \pm i\]
の4つということになります。念のために 1 を約数の積で書くと
 
\[1=1 \cdot 1,\quad (-1) \cdot (-1),\quad i \cdot (-i)\]
となります。 ⇒ 複素解析学問題集トップページへ

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