【AG25】長方形を切り出して黄金比を求めます
図のように赤い枠線で囲われた長方形に相似になるように青く塗られた長方形を切り出します。
(1) 赤枠の長方形の長いほうの辺の長さを \(a\), 短いほうの辺の長さを \(b\) とします。比率 \(k =a/b\) を求めて有効数字 4 桁の有理数で近似してください。計算には \(\sqrt{5}=2.2361\) の値を用いてください。
(2) 赤枠の長方形の面積を A, 青く塗られた長方形の面積を B とします。面積比 \(s=A/B\) を求めてください。
【ヒント】有名な黄金比を求める問題です。縦の長さをどのようにおくかがポイントです。
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【解答】縦の長さに対する横の長さの比を知りたいのですから、縦の長さを 1 とおけば簡単です。問題の条件より横の長さは k ですね。大きい長方形と小さい長方形は相似なので、
\[1:k=k-1:1\]
という関係があります。したがって $k$ の方程式は
\[1=k\:(k-1)\]
となり、これを整理すると
\[k^2-k-1=0\]
という2次方程式を得ます。解の公式より $k\gt 0$ となる解は
\[k=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\]
となります。これに $\sqrt{5}=2.2361$ を入れて計算すると
\[k=\frac{1+2.2361}{2}=1.618\]
となります。これが 黄金比 とよばれる数字です。
(2) 図より大きい長方形の面積は $A=k$, 小さい長方形の面積は $B=k-1$ とおけるので、その比を計算すると
\[s=\frac{A}{B}=\frac{k}{k-1}=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\]
を得ることができます。
【補足】黄金比 (golden ratio) は最も美しい比率だと言われています。その存在は数千年前から知られており、紀元前に記された『ユークリッド原論』、ローマ時代の建築家ウィトルウィウスによる『De Architectura (建築十書)』などにその記述が確認されています。古代ギリシャのパルテノンは黄金比によって形作られた有名な神殿です。ただこの建築物の比率が数学的根拠に基づいて定められたかどうかはわかりません。美的感覚に優れた人であれば、数学を知らなくても直感的に黄金比を選択する可能性があるからです。現代でも黄金比はとても身近な存在で、コミックや名刺など様々な日用品の中にその姿が隠されています。美しい比率であるということは、人目をひくということでもありますから、もし漫画が黄金比でなかったら、売上に大きな影響を及ぼしていたかもしれませんね。商品が黄金比であるということと利益の間の相関関係を調べてみるのも面白そうです(でもこれは経済学の分野ですね)。皆さんも日々の暮らしの中で「黄金比」を見つけてみてください(長さの比が 1:1.618 ですよ。お忘れなく!)。
【AG26】貴金属数(黄金数、白銀数、青銅数)
二次方程式 \(x^2-nx-1=0\) の解 \(x_n\) を 第 n 貴金属数 とよびます。
(1) $x_1$ (黄金数)、$x_2$ (白銀数)、$x_3$ (青銅数) を求めてください。
(2) $x_n-1/x_n=n$ となることを示してください。
【ヒント】前の問題 (AG27) をより一般化した 貴金属数 (metallic number) に関する問題です。とてもやさしい問題ですので気楽に解いてみてください。
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【解答】(1) 解の公式を使って $x^2-nx-1=0$ を解くと
\[x_n=\frac{n+\sqrt{n^2+4}}{2}\]
となるので、$n=1,\ 2,/ 3$ を入れると
\[\begin{align*}x_1=&\frac{1+\sqrt{5}}{2}\\[6pt]x_2=&1+\sqrt{2}\\[6pt]x_3=&\frac{3+\sqrt{13}}{2}\end{align*}\]
となります。
(2) $x_n$ の逆数をとって分母を有理化します。
\[\begin{align*}\frac{1}{x_n}=&\frac{2}{n+\sqrt{n^2+4}}\\[6pt]=&\frac{2\:(n-\sqrt{n^2+4})}{(n+\sqrt{n^2+4})(n-\sqrt{n^2+4})}\\[6pt]=&\frac{2\:(n-\sqrt{n^2+4})}{-4}\\[6pt]=&\frac{-n+\sqrt{n^2+4}}{2}\end{align*}\]
$x_n-1/x_n$ を計算すると
\[x_n-\frac{1}{x_n}=\frac{n+\sqrt{n^2+4}}{2}-\frac{-n+\sqrt{n^2+4}}{2}=n\]
となります。
【補足】1:√2 または 1:1 + √2 という比率は 白銀比 とよばれています。とくに 1:√2 の白銀比は奈良の法隆寺にも取り入れられるなど、日本で古くから親しまれてきた比率であり、「大和比」ともよばれています。現代でもコピー用紙や A5 ノートなど身近なところで目にします。黄金比が「美しさ」を強調するのに対して、白銀比は「実用性」の高い比率だと言われ、工業製品の規格に多用されています。
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